発酵食品 (25)高コレステロール食に豆乳ヨーグルトを
発酵食品 (25)乳酸発酵させた豆乳の効果2
「(24)乳酸発酵させた豆乳ヨーグルトに対する期待」では、下記の報告の背景と概要についてご説明させて頂きました。
今回から早速、具体的な方法と結果についてご紹介させて頂きます。
タイトル:Hypocholesterolemic Effects of Lactic Acid-Fermented Soymilk on Rats Fed a High Cholesterol Diet
訳:「高コレステロール食を与えたラットに乳酸発酵させた豆乳のコレステロール低下作用」
研究者:Maki Kobayashi, Rie Hirahata, Shintaro Egusa, and Mitsuru Fukuda
研究機関: Department of Food Science and Nutrition, School of Human Environmental Sciences, Mukogawa Women’s University, 6-46 Ikebiraki-cho, Nishinomiya, Hyogo 663-8558, Japan (武庫川女子大学生活環境学部食物栄養学科)
Food Science and Nutrition Major, Graduate School of Human Environmental Sciences, Mukogawa Women’s University, 6-46 Ikebiraki-cho, Nishinomiya, Hyogo 663-8558, Japan、他。
公表雑誌:Nutrients. 2012 Sep; 4(9): 1304–1316.
方法1 発酵豆乳を混ぜた高コレステロールのエサの構成成分
表1は、冷凍乾燥させた発酵豆乳の成分構成とエネルギーを示しています。
表2には、標準飼料(AIN-93G)及び対照群のエサと発酵豆乳を混ぜたF-5及びF-10のエサの違いについて示されています。
この表2をエクセルに取り込んで日本語化して下に示しました。
表2に示した「AIN-93G 」は、米国国立栄養研究所(AIN、 American Institute of Nutrition) が1993年に示した標準飼料成分を指しており、カゼインが20%含まれます。
今回の実験で使った他のエサ成分との比較のため、「AIN-93Gの成分データ」を現しています。
この実験で使った対象のエサはコレステロールを1%に調整した高コレステロールのエサです。
その対象のエサ(C)にはカゼインがAIN-93Gと同じ割合で含まれ、乳酸発酵させた豆乳ヨーグルトを混ぜたエサはF-5及びF-10として成分を示しました。
1) 表2で「C」は、対照のエサでカゼイン蛋白質が20%、大豆油7%が含まれています。
2) 「F-5」は、カゼインを14.2%に減らし、発酵豆乳を11.7%(表2の下から3行目)とし、大豆油を2.8%含みます。
ここで「F」は、「fermented(発酵させた) soy-milk(豆乳)」と言う意味です。
また、「F-5」の「5」は、大豆タンパク質として5%含まれていることを意味します。
3) 「F-10」は、カゼインを8.4%に減らし、発酵豆乳を23.4%(表2の下から3行目)とし、大豆油を0%にしたエサです。
F-10には、大豆タンパク質として10%含まれることを意味しています。
どのエサでも100g当たりの摂取エネルギーは、表2の最下行が示すように、ほぼ一致させています。
また、豆乳ヨーグルトを作るために、大豆を15時間発酵させた乳酸菌は、TUA-4408L乳酸菌(SNC33)のラクトバチルス・デルブリッキィ 亜種 ブルガリクス菌株を使用しました。
方法2 高コレステロール食と発酵豆乳を混ぜた高コレステロールのエサの実験群
ラットは各群8匹ずつで、下のように分け、1週間、AIN-93Gの標準飼料を与えた後、次のエサを5週間与えました。
(a)対照群(C)のエサ(高コレステロールのエサ)。
(b)F-5群は、対照群のエサのカゼインを減らし、5%大豆タンパク質含むエサで、11.7%の発酵豆乳を含むエサ。
(c)F-10 群は、対照群のエサのカゼインを減らし、10%の大豆タンパク質を含むエサで、23.4%の発酵豆乳を含むエサ。
結果1 体重、食事摂取量、食事効率、エネルギー摂取量の変化(表3)
<表3の見方>
報告の表3は、各群8匹のラットに実験食餌で5週間飼育したラットの初期および最終体重、食物摂取量、食物効率、全エネルギー摂取量および組織重量を示しています。
この表3をエクセルに取り込み、日本語化したのが下の表3です。
上記表3の対照群(C)、乳酸発酵豆乳を添加したF-5及びF-10のどのエサにもコレステロールが1%加えられた高コレステロール食です。
C群は、対照群のエサで、カゼイン20%、大豆油7%を含むエサ。
F-5群はカゼインを14.2%、大豆油2.8%、発酵豆乳を11.7%混ぜたエサ。
F-10はカゼインを8.4%、大豆油0%、発酵豆乳を23.4%混ぜたエサを示しています。
また、各値は、8匹のラットの平均±SE(標準誤差)を示し、
a、bの上付き文字は、原著の表3には、いくつもつけられており、いずれも有意差があることを意味していますが、データは、平均値±標準誤差で示されています。
報告通りなら、いずれも「対照のエサ(C)の群」とは有意差があることを示しています。
<表3から解ること> ・・・・上の説明が長くなりましたが、ここからが大事です!
この表3から発酵豆乳を混ぜたエサを与えられたラット(F-5、F-10)で次のことが示されました。
1) 5週間後のF-10群の肝臓重さは、C群ラットの肝臓と比較して、かなり減少していた。
2)F-10群の盲腸の重さは、CとF-5グループのそれらと比較して、かなり増加していた。
3)体重を比較すると、対照群(C群)に比べ、F-5群及びF-10 群のラットの体重は減少していた。
標準誤差は母集団の平均値の区間推定を行えることから、今回の実験に限らず、より一般的な結論を導き出すために標準誤差が使われる傾向にあるようです。
従って、私の個人的な考えとしては「標準偏差」を使って、まずは今回の実験結果についてのみ、クリアな結論を示すべきであると考えます。
その理由は、今回のようなエサを5週間与えた際のデータが、母集団として扱えるほどごく一般的な値を示しているのかどうかについて、私には理解できないからです。