電子タバコに禁煙効果はあるか? (3)多変量ロジスティック回帰分析を使う理由
電子タバコに禁煙効果はあるか? (3)多変量ロジスティック回帰分析を使う理由
「(1)電子タバコの問題点」では、ニコチンが含まれている電子タバコとニコチンを含まないデバイス(電子タバコ)が存在することによる禁煙効果以前の社会的問題を指摘しました。
「(2)電子タバコの禁煙効果」では、電子タバコによる禁煙の有効性について解析した結果を説明し、電子タバコが禁煙には有効性が認められないことを示しました。また、他の禁煙方法とも禁煙効果について比較しました。
今回は、「禁煙につながる要因」を解析するために多変量ロジスティック回帰モデルを使う理由について考えてみましょう。
タイトル:Electronic Cigarette Use and Smoking Abstinence in Japan: A Cross-Sectional Study of Quitting Methods
訳:「日本における電子タバコの使用と禁煙の関係」
研究者:Tomoyasu Hirano, Takahiro Tabuchi, Rika Nakahara, Naoki Kunugita, 他。
研究機関:Center for Cancer Control and Information Services/Center for Public Health Sciences, National Cancer Center, Tokyo 104-0045, Japan.国立がんセンター。
Center for Cancer Control and Statistics, Osaka Medical Center for Cancer and Cardiovascular Diseases, Osaka 537-8511, Japan;大阪府立成人病センター
公表雑誌:Int J Environ Res Public Health. 2017 Feb; 14(2): 202.
<用語説明>
ロジスティック回帰分析を使う理由
「メタボの要因は何か? (4)ロジスティック回帰分析を使う理由」を参照して、ロジスティック回帰分析についての基礎知識をご確認ください。
多変量とは
複数の説明変数(性別、年齢、喫煙開始年齢、婚姻状態、他)から、目的変数(禁煙できる要因)を分析する手法を多変量解析と言います。
この時、目的変数である「禁煙できる場合を1」、「喫煙できない場合を0」とするとき、ロジスティック回帰を使い、
「禁煙できる場合と禁煙できない場合の確率(0~100)で現す場合をロジスティック回帰分析と言います。
重回帰分析とロジスティック回帰分析の計算手順は、同じです。その概略を「多変量解析の分類」から引用し、下に示します。
多変量解析の分類 ・・・今回は「禁煙できる要因の分析」なので、ロジスティック回帰分析を使う理由をつかむ。
結果を予測するための原因側のデータを「説明変数(独立変数)」と言い、
結果の変数を「目的変数(従属変数)」と言います。
結果は原因によって決まるので、「結果は原因に従属している」という意味で、目的変数を「従属変数」とも言い、
また原因は独立しているので、説明変数を「独立変数」とも言います。
下の表で、「結果」である目的変数には、数値で表せる量的なデータの場合と、「0 または1(禁煙できる、出来ない)」の様な質的表現で表せるデータに分類されます。
同様に原因あるいは要因である説明変数にも量的データ(変数)と質的データ(変数)があり、それぞれ下の表に示した分析方法で解析します。
今回の「禁煙できる、出来ない」と言う質的な結果を予測するための説明変数(要因)は、喫煙年数、喫煙本数と言った量的変数から予測するモデル(計算方法)を想定していますので、上の表の判別分析やロジスチック回帰分析が利用できることになります。
判別分析とロジスティック回帰分析の違いは、データのバラつきの違いで使い分けますが、計算方法は同じで、両者の違いについては、こちらを参照して下さい。
他にもいろんな統計手法の概要は、こちらのサイトでも紹介されていますので、関心のある方は参照して下さい。