電子タバコに禁煙効果はあるか? まとめ
電子タバコに禁煙効果はあるか? まとめ
国立がんセンターと大阪府成人病センターが2017年に公表した下記の報告について、下の(1)~(4)に分けて紹介させて頂きました。
タイトル:Electronic Cigarette Use and Smoking Abstinence in Japan: A Cross-Sectional Study of Quitting Methods
訳:「日本における電子タバコの使用と禁煙の関係」
研究者:Tomoyasu Hirano, Takahiro Tabuchi, Rika Nakahara, Naoki Kunugita, 他。
研究機関:Center for Cancer Control and Information Services/Center for Public Health Sciences, National Cancer Center, Tokyo 104-0045, Japan.国立がんセンター。
Center for Cancer Control and Statistics, Osaka Medical Center for Cancer and Cardiovascular Diseases, Osaka 537-8511, Japan;大阪府立成人病センター
公表雑誌:Int J Environ Res Public Health. 2017 Feb; 14(2): 202.
なお、上記の報告について、国立がんセンターのサイトで、「紙巻タバコの禁煙方法と有効性を調査 電子タバコでの禁煙は有効性が低い」との紹介がございましたので、参照して下さい。
まとめ ・・・上記の結果を整理しておきます。
上の調査報告から、喫煙者が禁煙するために方法の一つとして、日本における電子タバコ利用の有効性を評価しました。
その結果、電子タバコの使用は、性別、年齢、喫煙開始年齢、婚姻状態、病歴および他の禁煙方法と比較したが、禁煙効果は認められなかった。
他方、日本の国民健康保険の対象となっているバレニクリンによる禁煙効果が確認された。
上の報告の結果と「まとめ」から考えるべき事 ・・・・上記報告の「考察」から
タバコ使用に伴うニコチン依存症対策として、世界保健機関(WHO)のタバコ規制枠組み条約(FCTC)第14条(タバコへの依存及びたばこの使用の中止についてのたばこの需要の減少に関する措置)により、タバコの規制が義務付けられています。
従って、タバコ規制枠組み条約(FCTC)の各当事国は、タバコ使用の中止を促進し、タバコ依存に対する適切な処置を講じる必要があります。
当事国である日本では、国民健康保険制度で2008年以来、外来患者の禁煙治療や禁煙薬が処方できるようになり、ニコチン置換療法とバレニクリンの使用が可能になりました。
ニコチン置換療法のオッズ比は1.84(95%信頼区間 = 1.71-1.99)、
バレニクリンのオッズ比は、2.88(95%信頼区間 = 2.41-3.47)で、
バレニクリンがニコチン置換療法および他の禁煙法よりも高い禁煙率が実証されています。
他方、電子タバコ利用者が喫煙をやめようとした場合、市販されていないニコチン置換療法剤を選択したり、医療支援なしで禁煙しようと試みる結果、禁煙成功率が有意に低いことが指摘されています。
その理由として次のことが指摘されています。
1) 「電子タバコの利用でニコチン依存症が改善できる」と考え、禁煙意欲が低い。
2) 謝った考えに基づき、禁煙すべき公共の場所でも電子タバコを利用し、公衆衛生上の問題を招き、より禁煙を困難にさせ、悪影響を与えている。
従って、電子タバコの普及は、「タバコ枠組み条約の当事国として、タバコ使用の中止を促進し、タバコ依存に対する適切な処置を講じる」事に対して障害となり得る可能性が高い。
以上のことから、電子タバコは禁煙補助として推奨または促進すべきではないことが明らかにされています。
これらの指摘から、日本における電子タバコの扱いは、「タバコ規制枠組条約」に組み入れて対応する必要があると考えられます。
日本では、電子タバコのデバイスやカートリッジは、無制限に食料品店で販売されており、電子タバコの使用は、「喫煙をやめたい喫煙者のための電子タバコ」および「電子タバコを吸う事でタバコをやめられる」とする宣伝や表記については、規制を明確にする政策変更を急ぐ必要があります。