副流煙 (8)肺ガン診断後、禁煙したヒトの要因分析4
副流煙 (8)肺ガン診断後、禁煙したヒトの要因分析4
タイトル:Second-hand smoke as a predictor of smoking cessation among lung cancer survivors.
・・・・・上記のPDFファイルはこちらです。
訳:「副流煙は肺ガン患者さんの禁煙に影響するか」
研究者:Eng L, Su J, Qiu X, Palepu PR, Hon H, Fadhel E, Harland L, La Delfa A,他。
研究機関:Princess Margaret Hospital/Ontario Cancer Institute/University Health Network, University of Toronto
Peter Selby, Centre for Addiction and Mental Health, University of Toronto, Toronto, ON, Canada.
カナダ・オンタリオ州のトロント大学、大学健康ネットワーク研究所。
掲載雑誌:J Clin Oncol. 2014 Feb 20;32(6):564-70.
「(1)副流煙について」では、タバコの喫煙により飛散される主流煙と副流煙中の有害物質量を比較したデータを示し、ニコチン、ホルムアルデヒド及び一酸化窒素が主流煙に比べ、副流煙で明らかに多いデータを示しました。
この結果を見るなら、喫煙者が吸い込む煙(主流煙)よりも受動喫煙や副流煙にさらされる有害性がより高いことは明らかです。
そして「(2)副流煙の影響調査」では、下記報告の方法について説明しました。
「(3)肺ガン診断時に喫煙していたヒトで喫煙を辞めたヒトの調査」では、被験者の分類について述べ、肺ガン診断時に242名が喫煙していることを示しました。その後、喫煙を止めた被険者は136名でした。
次に「(4)肺ガン診断時に喫煙していたヒトの喫煙量と副流煙の評価」では、上の242名の特徴について、社会人口統計データ、臨床病理学的特徴、及び副流煙曝露環境を調査しました。
その結果、肺ガン診断後も喫煙を継続している被験者は、被験者自身が喫煙をやめられないニコチン中毒状態である事が指摘されました。
「(5)肺ガン診断後、禁煙したヒトの要因分析1」では、肺ガン診断時に喫煙していた242名の内、その後、喫煙を辞めた136名の副流煙曝露環境を解析したところ、同居家族の禁煙により、副流煙及び受動喫煙にさらされない環境が「喫煙している肺ガン患者の禁煙」に必要な環境要因である事を示しました。
「(6)肺ガン診断後、禁煙したヒトの要因分析2」では、「肺ガン診断後の喫煙者の禁煙」につながる要因として配偶者及び同僚の喫煙状態を調査し、家族・配偶者や職場の同僚の喫煙が、「肺ガン診断後の喫煙者の禁煙」を阻害している統計結果を示しました。
「(7)肺ガン診断後、禁煙したヒトの要因分析3」では、受動喫煙暴露時間が長いと、喫煙していて肺ガン患者の禁煙率は下がること。加えて、副流煙による暴露時間が長いほど「喫煙していた肺ガン患者の禁煙」を困難にしている事を明らかに示しました。
今回は、「肺ガンと診断された喫煙者の喫煙率の変化」についてご紹介します。
結果4 喫煙者が肺ガンと診断された時点からの喫煙率の変化
下の図2は、喫煙していた患者さんが肺ガンと診断されてからの喫煙率の変化を4年間追跡調査した結果です。
(A)~(E)の各グラフは、喫煙していた肺ガン患者さんの環境を次のように分けてクラフにしています。
(A)のグラフで、喫煙していた肺ガン患者さんの喫煙割合の変化は、家族に喫煙者がいる場合を青色で示し、家族に喫煙者がいない場合を黄色で示しています。
また、(B)は配偶者が喫煙している場合に青色で示し、配偶者が禁煙している場合を黄色で示しています。
<図2のグラフから解ること>
・・・・この(A)のグラフの変化から、家庭による受動喫煙や副流煙にも暴露されない黄色が示す肺ガン患者さんの喫煙率は、肺ガン診断後1年で40%以下に下がっています。
・・・・他方、家庭で受動喫煙を受ける環境では、肺ガン診断後も、喫煙率の低下は受動喫煙のない環境に比べ半分程度であったことが解ります。
・・・・すなわち、配偶者の禁煙状態が、「喫煙していた肺ガン患者さん」の禁煙効果を高めることを示しています。
・・・・このグラフから、同僚に喫煙者がいない環境が示す黄色の肺ガン診断を受けた喫煙者の喫煙率は、大きく低下しています。
・・・・合併症のない黄色の喫煙率低下に比べ、合併症が1~3と増えるに従い、喫煙率の低下が少ないことが解ります。
<まとめ>
「喫煙していた肺ガン患者さんの禁煙率」は、家族、配偶者、職場の同僚が禁煙しているほど、効果的な禁煙が期待できると考えられそうです。
すなわち、周囲に喫煙環境があることで、「喫煙していた肺ガン患者さん」は、禁煙しようとしても、「ニコチンに対する依存」により受動喫煙あるいは副流煙によって、ニコチンに対する欲求が誘発され、禁煙率が低下してしまう可能性が考えられます。
また、見方によっては、目の前にいる「喫煙していた肺ガン患者さん」の生存の危険性を理解できないのではなく、「家族」、「配偶者」及び「同僚」もすでにニコチンに対する依存から逃れられない可能性を示唆しているのかも知れません。
その結果、肺ガン患者さんの家族や同僚は、肺ガン診断を受けた家族や同僚の生命の危険性を配慮できないほど「ニコチンに対する依存」から抜け出せない状況に陥らないよう、気がついた時点から禁煙に取り組まなければ、家族も自分もいずれ「ニコチンに溺れる」最期を迎えることにならないでしょうか。
ぜひ、早期治療によりニコチンに対する依存を回避して頂きたいと考えます。