食中毒の原因 (5)腸炎ビブリオ
食中毒の原因 (5)腸炎ビブリオ
これまで食中毒の原因菌として「(3)サルモネラ菌」と「(4)カンピロバクター」についてご説明させて頂きました。
・・・・この2つの細菌の共通点は、鶏の常在菌であることです。
従いまして、食品として鶏肉の扱い及び調理法に注意することで感染を防ぐことが可能です。
今回ご紹介させて頂きます腸炎ビブリオは、夏の魚介類や漬物の8%塩分でも増殖しますので、これからの季節には注意が必要です。
腸炎ビブリオ
食中毒の原因となる食材
生の魚や貝などの魚介類が原因となりますので、刺身や寿司、仕出し弁当など魚介類を生で食べることが原因になることが多いです。
そのため魚介類を扱ったまな板と包丁などの調理器具をしっかりと洗ってから、他の食品を扱うことが必要です。
例えば、「旅館でアジを調理後、軽く水洗いしたまな板で、一夜漬けにするためのキュウリを刻み、
このキュウリに塩を加え、一夜漬けを作り、室内に放置後、翌朝の朝食に提供したところ、夜になって宿泊客がおう吐、下痢、腹痛などの食中毒症状を訴えたので、調査した結果、腸炎ビブリオであった。」と言うものです。
・・・・夏場の漬け物は冷蔵庫内で漬け込み、保管しましょう。
・・・・東南アジアからの漁貝類については生食を避けましょう。
・・・・夏場の回転寿司は、回転しているお寿司を避け、注文し握ってもらったお寿司を頂きましょう。
腸炎ビブリオの特徴 ・・・・溶血素という毒素を産生します!。
1~8%の塩分と20度以上で増殖する菌で、真水や熱に弱い特徴があります。
・・・・海水温が上がる夏場に発生しやすいことが理解できます。
・・・・また、「塩漬けだから大丈夫」と考え易い点にもご注意下さい。
食後4時間~96時間で、激しいげりや腹痛などの症状が出ます。
食中毒の原因は溶血素毒による!
腸炎ビブリオの学名は、Vibrio parahaemolyticus(ビブリオ・パラヘモリティカス)と言い、
ヘモリティカスとは「溶血する」という言う意味があります。
・・・・このことから、腸炎ビブリオによる食中毒の原因は、腸炎ビブリオが産生する溶血毒です。
溶血毒は、赤血球の細胞膜に孔をあけて溶血現象を引き起こしますが、赤血球以外の細胞にも作用して、細胞傷害を起こします。
腸炎ビブリオの溶血毒は、主に消化管や心臓にも作用します。
消化管とは口腔から肛門までの管状の器官を指しますが,舌,唾液腺,膵臓,肝臓,胆嚢も含まれます。
これら消化管の粘膜に溶血素が作用すると、粘膜の出血、損傷、粘膜の欠損(びらん)、潰瘍形成、炎症、粘膜萎縮、消化管の癒着などの組織変化をもたらし、下痢、おう吐を引き起こします。
腸炎ビブリオ感染による症状
腸炎ビブリオの摂取24時間以内に、腹痛・吐き気・嘔吐・発熱・悪寒をともなった水様蹴り下痢を起こります。
症状は三日間程続き、重症例は少ない。
腸炎ビブリオによる食中毒では、軽症で治療を必要としない場合がかなりあります。
下痢で失われる水分を充分に補給する必要があります。
腸炎ビブリオの検査
便の培養で出来たコロニーに対して「耐塩試験」を行い、溶血毒産生検査で腸炎ビブリオの確認を行います。
腸炎ビブリオ感染症の治療
消化管のぜん動を抑制をする強力な下痢止めは、菌の体外排除を遅らせるので使用しない。
下痢による脱水症状に対しては輸液を行う。
腸炎ビブリオの予防
夏場の海水中に存在した生の海産物の表面には、海水や腸炎ビブリオが存在する可能性があります。
生の海産物については、水道水を用いて、海水や腸炎ビブリオを洗い落としましょう。
海水が付着していると、腸炎ビブリオが増殖しやすいのです。
夏場、生の海産物は、室温で放置しないで冷蔵・冷凍で保管しましょう。
特に海水温が高い夏場の生カキや生の貝などの生の海産物を食べるのは控えましょう。
最近の腸炎ビブリオ食中毒例
2017年8月、新潟県の仕出し料理を食べた49人が下痢や腹痛、吐き気などの症状を訴え、うち6人から原因菌の腸炎ビブリオが検出された。49人。うち2人が入院。
2004年、都内の霊園で法事後,霊園内の飲食店で会食した10グループ128名のうち93名が発症した.患者糞便及び2日分の検食から腸炎ビブリオが検出された。
歴史的な「しらす干し食中毒」
1950年10月、患者272名、死者20名を出す、戦後最大の食中毒事件が大阪で発生。
この時の日本で「シラス干し食中毒」で検出されたのが「腸炎ビブリオ」です。日本人が発見者ということです。
<関連情報>