オゾン (3)オゾンの除菌メカニズム
オゾン (3)オゾンの除菌メカニズム
これまで、「(1)健康に及ぼすオゾン層の役割」及び「(2)環境に及ぼすオゾン層の役割」についてご説明させて頂きました。
オゾンの効果については、多種多様ですが、ここでは殺菌(除菌)効果、消臭効果の機序及び食品への利用に限定してご説明させて頂きます。
オゾンの効果
オゾンは酸素原子(O)が3つ結びついたものを言い、化学式でO3と表します。
通常の酸素(O2)分子に比べ、オゾンは酸素原子がひとつ多い「O3」の状態で存在することで、
オゾン(O3)は安定している酸素(O2)に戻ろうと、余分な酸素原子(O)を他の物質に与える現象が起きます。
この現象を酸化現象といいますが、オゾンはこの性質を利用して、脱臭や除菌などを行います。
この酸化現象は、オゾンの酸素原子が臭い物質や細菌と化学的に(酸化)結合し、酸化物を作ることで、脱臭や除菌が行われます。
また、オゾンは必ず酸素に戻る性質があるので、薬剤のように残留性の心配がありません。
これらオゾンの性質を利用する事で、殺菌、脱臭の効果を期待できます。
但し、このような反応性の高いオゾンが、人体に対して安全であるかどうかは別の問題です。
当然、これらのオゾンによる効果は、高濃度であれば短時間で効果が期待され、低濃度なら長時間でその効果が得られます。
例えば、除菌効果が期待できるオゾン濃度は、0.1ppm(有人環境下では、0.02ppm~0.03ppmとされ、
脱臭効果が期待されるオゾン濃度も、0.02ppm~0.03ppm程度と示されています。
これらのオゾンによる効果を目的として、すでに多くの病医院や老人ホーム、福祉施設の他、動物病院、飲食店、旅館やホテルのトイレの他、厨房や汚物処理室にも設置されています。
また、最近では一般家庭用のオゾン発生装置が多数販売されています。
オゾンの除菌メカニズム
薬剤による除菌の場合、細菌やウイルスの細胞の核に作用したり、細菌の代謝過程を阻害することで除菌します。
この除菌では、薬剤の作用部位はほぼ決まっており、その薬剤に対する耐性を持った耐性菌や抵抗性のウイルスが発生する恐れがあります。
他方、オゾンによる除菌は細胞膜(膜脂質、膜タンパク質)を酸化して同時多発的に破壊します。
細胞膜が破壊されると、細胞の核に細胞内の情報が伝えられず、細菌やウイルスは生存のための代謝機能を働かせることができず死滅しますので、耐性菌は発生できないと考えられています。
さらに、オゾンは除菌作用を示した後、残りの酸素2原子は、酸素分子へ戻るので安全です。
このようなオゾンによる除菌は、「溶菌」と呼ばれ、膜タンパク質とオゾンが化学反応することで、細菌の細胞壁(膜)が破壊され、細胞内成分が漏れて死滅し、増殖を防ぎます。
その詳細な機序は次のように考えられています。
<オゾンの反応による細菌やウイルスの破壊機序> ・・・こちらを参照して下さい。
1)オゾンによる細胞膜構成成分の不飽和二重結合との酸化反応により、膜流動性を変化させ、
2)酵素を含む膜タンパク質との酸化反応により、酵素活性を変化させる。
3)遺伝子(グアニンなどの核酸塩基)との反応により、立体構造に変化を与え、遺伝情報を混乱させる。
4)これら上記1)〜3)の立体構造を変え、膜タンパク質や膜脂質の機能を傷害する。
5)これらの結果、細菌やウイルスの1)〜3)の機能が障害される。
6)そして細菌やウイルスの増殖や複製が阻害される。