オゾン (8)オゾンによるノロウイルス対策1
オゾン (8)オゾンによるノロウイルス対策1
このシリーズの(1)~(7)でオゾンについての一般的な作用と具体的な利用状況について説明してきました。
今回から、以下の「オゾンによる消毒」として食中毒で問題になるノロウイルスに対する報告をご紹介させて頂きます。
タイトル:Characterization of Ozone Disinfection of Murine Norovirus
訳:「マウスノロウイルスのオゾン消毒の特性」
研究者」Mi Young Lim, Ju-Mi Kim, Jung Eun Lee, and GwangPyo Ko、他。
研究機関:Department of Environmental Health and Institute of Health and Environment, School of Public Health, Seoul National University, Seoul,
公表雑誌:Appl Environ Microbiol. 2010 Feb; 76(4): 1120–1124.
今回ご説明する内容は、この研究の背景、ノロウイルスの培養と保存、オゾンの生成と分析までとします。
そして次回、オゾンによるノロウイルス暴露実験、残存オゾンの測定、暴露後のノロウイルスの活性(力価)の測定法について述べ、結果の一部についても紹介させて頂きます。
背景
食中毒でしばしば原因ウイルスとして問題にされるヒトノロウイルスに対するオゾンの有効性については、あまり調べられていません。
そこでヒトノロウイルスの代わりに、マウスノロウイルスを使ってオゾン殺菌の有効性を検討しました。
その理由は、オゾン処理後の有害性が低いオゾンによる食品洗浄や手指及び調理器具、及び調理に使用する水の消毒に対するオゾンの利用が広く期待されているからです。
オゾンを取り込ませてない緩衝液中のマウスノロウイルスを、2つの異なるpHおよび温度で所定のオゾン濃度に暴露させた後、マウスノロウイルスをプラークアッセイと2つの逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)でウイルスの活性(力価)を分析しました。
方法1 マウスノロウイルスの調整
マウス・ノロウイルスは、RAW 264.7細胞(マクロファージの培養細胞株)に感染させて増殖させた。
感染後にウイルス粒子を放出させ、クロロホルムで抽出後、4℃で10分間、低速(4,000× g)遠心分離によって上清を回収した。
このウイルス抽出物を遠心限外濾過で精製し、ポリカーボネートフィルターで連続濾過により分散し、使用するまで、-80℃で保存した。
方法2 オゾンの生成と分析
オゾン発生器(Ozonia North America社製のLAB 2Bオゾン発生装置)でオゾンを発生させた。
濃縮オゾン・ストック溶液(> 40mg /L)は、オゾンガスを蒸留水500mlの褐色瓶に通気して調製した。
オゾン濃度はインディゴ比色法で測定した。すなわち、インジゴ試薬に試料水を加え、インジゴ特有の藍色の退色度合いを波長600nmで吸光度を測定し、水中のオゾン濃度を確認、調整した。