オゾン (4)薬物テロや廃炉におけるオゾン利用と殺菌力
オゾン (4)薬物テロや廃炉におけるオゾンと殺菌力
「(1)健康に及ぼすオゾン層の役割」及び
「(2)環境に及ぼすオゾン層の役割」についてご紹介させて頂きました。
また「(3)オゾンの除菌メカニズム」では、オゾンの除菌、消臭効果の機序についてご説明しました。
今回は、これまでの環境、健康及び除菌・消臭効果以外で、最新のオゾン利用目的についてご紹介します。
薬物テロや廃炉におけるオゾン利用
このシリーズでは、これまオゾンの環境における役割や、健康問題におけるオゾンの役割について紹介し、また、オゾンの除菌の機序についても概要をご説明してきました。
<化学・生物テロ対策におけるオゾンの利用>
オゾンの役割は、前回までの環境や健康問題に限らず、サリンをはじめとする化学兵器による除染にも利用され、サリンの無毒化における除染やVXガスをはじめとする神経ガス対策、びらん剤対策にも利用が検討されています。
現実的な問題として、東京消防庁の消防救助機動部隊は、平成23年に「オゾン除染」の訓練を行っており、オゾンの利用が具体的に検討・訓練にも取り入れられてます。
さらに群馬県医師会講演会では、平成29年7月、化学テロで搬送された被害者(患者)の除染システムとして「オゾン水製造機」で製造されたオゾン水のシャワー除染後に、治療を開始する手順を確認しています。
また、天然痘、炭疸菌、ボツリヌス菌等を細菌兵器として散布する生物兵器テロに対してもオゾンに大きな期待が寄せられています。
その理由は、オゾンによるこれら細菌に対するCT値(下の「殺菌力を数値化する」を参照)が下の表のようにすでに明らかにされているからです(下の表の引用先は、リンクしてますので、下表をクリックして下さい)。
<原発事故や廃炉におけるオゾンの利用>
原子力発電所における事故処理や廃炉作業にも放射性物質の分解には利用されるが、放射性元素そのものを分解することはできないので、放射能を減らすことにはならないと指摘されています。
しかしながら、他に有効性が期待される除染法でも、放射性元素の分解はできないことから、除染後の処理液発生の負荷が少ないオゾンに対する期待は大きく、主に付着した放射性物質を剥がす目的でオゾンの利用が検討されており、「高濃度オゾン水を用いた放射性物質除去装置及び放射性物質除去方法」の研究が進められています。 ・・・・その結果の一部はこちら。
オゾンの殺菌力・除菌力
次亜塩素酸による殺菌消毒は、広く知られており、病医院や介護施設では、下痢・嘔吐に伴う汚物処理に使用されています。
その一方で、臭いや、副生成物(トリハロメタン、クロロホルム)が発生する問題などのため、多くは緊急時以外にはあまり使用されません。
しかしオゾンの酸化力は、次亜塩素酸以上で、サルモネラ、黄色ブドウ球菌、大腸菌などの細菌は2ppmのオゾン水濃度で10数秒で100%死滅します。
A型インフルエンザウイルスは3ppmのオゾン水濃度では、15秒で99.99%以上が死滅します。
また、O-157に対しては、2ppm、10秒処理で、100%の殺菌効果が明らかにされています。
殺菌力を数値化する
オゾンに限らず、除菌や不活性効果を示す指標で、
薬剤(オゾン)濃度(concentration、単位はppm)と時間(time、単位はmin)を掛けあわせて数値化したものをCT値(concenntoration × time) として殺菌力を表します。
CT値(濃度×時間)=濃度(オゾン濃度の単位は、ppm) × 時間(分)
例えば1ppmのオゾン濃度で30分除菌したときのCT値は 1 ✕ 30 = 30 で、CT値=30 と計算されます。
また、上の表で「サリンのCT値は、10」と示されていますので、理論上は10ppmのオゾン水をかぶって1分間息止めをして我慢するなら、体表のサリンは不活化されることになります。
・・・また上の表で「サリンの行を横に見ていきますと」、1ppmなら10分、2ppmなら5分、そして4ppmなら2.5分で無毒化されるデータが確認されます。
こちらの「オゾン発生装置専門店(オゾマート)」が、オゾンガス除菌データによる様々な細菌やウイルスに対するCT値を示していますので、参照して下さい。
・・・・さて、上のリンク先で「ノロウイルスに対するCT値=72」 と示されています。
・・・・つまり1ppmのオゾンで72分、2ppmなら36分程度で除菌できることになります。
・・・・すなわち、オゾンガスを利用する事で、細菌やウイルスだけでなくトイレ臭、タバコ臭、ニンニク臭、汚水臭、体臭、汗の臭い、ペット臭などの消臭に対しても、CT値=60程度で、消臭できることが明らかにされています。
そして同じ上のリンク先の下に示される「オゾン水 除菌データ」は、一般的なウィルス・細菌は 1〜2ppm程度のオゾン水濃度でわずか5〜30秒でほぼ100%死滅します。
これほどの効果が明らかにされますと、食品及び食品加工業でも、ほとんどの食中毒対策に有効性が期待できそうです。