オゾン (13)オゾンナノバルブ水の歯周病菌に及ぼす影響
オゾン (13)オゾンナノバルブ水の歯周病菌に及ぼす影響
前回の「(12)オゾンナノバルブ水」では、下の報告で紹介される歯科領域における基本的な事を「研究の背景」とともにご説明さて頂きました。
そしてオゾンガスをナノサイズの気泡にすると、電解液中で6ヶ月以上安定状態を保つ技術を確立し、歯科領域における利用の可能性をご紹介させて頂きました。
今回は、オゾン・ナノバブル水の作成法と歯周病菌に対する効果についてご説明させて頂きます。
タイトル:Effects of ozone nano-bubble water on periodontopathic bacteria and oral cells – in vitro studies
訳:「オゾンナノバブル水が歯周病原菌および口腔細胞に及ぼす影響 – 試験管内での研究」
研究者:Sae Hayakumo, Shinichi Arakawa, Masayoshi Takahashi,他。
研究機関:Department of Periodontology, Graduate School of Medical and Dental Sciences, Tokyo Medical and Dental University,、東京医科歯科大学大学院歯科学研究科歯周病学科、他。
公表雑誌:Sci Technol Adv Mater. 2014 Oct; 15(5): 055003.
方法1 オゾンナノバルブ水(NBW3)の作成
現在の国立研究開発法人産業技術総合研究所と株式会社REO研究所の共同開発で、電解質イオンを含む水の中でマイクロバブルを瞬時に圧壊させることで、直径が1μm(マイクロ)以下のナノバブルの製造と安定化に成功しました。
さらに、オゾンをナノバブルとして含む水は、通常、常温常圧下の開放した条件では数時間で散逸してしまう水中のオゾンを、一ヶ月以上に渡って保持することができます。
これにより医療や食品製造などの現場において、殺菌効果のあるオゾン水を手軽に使用することが可能となります。
マイクロバブルとして分散されたオゾンガスの濃度は、約50gNm -3 で、
少なくとも1ヶ月間冷暗所に保管したオゾンナノバルブ水をインジゴ法で評価したところ、水性オゾン濃度は約 1.5mg/Lであった。
<オゾン濃度の単位換算について>
上記の「50gNm -3 」のN(ニュートン)は、標準重力加速度を考慮した単位で、「m-3」は、単位体積(1㎥)当たりを示していますので、その 1/1000 のN(ニュートン)≒1g/㎥ とほぼ等しいと解釈されます。
・・・・・すなわち1立法メートルの水に約50gのオゾンを含ませたと考えられますので、
1m3(立方メートル)=1,000L(リットル)=1t(トン)ですから、
50g/1トン=50g/1000リットル ・・・・→ 50×1000mg/1000リットルなので、
「50gNm -3 」の1リットル当たりのオゾン濃度は、 50mg/リットルが初期濃度と考えられます。
方法2 口腔内常在細菌の調製とオゾンナノバルブ水の効果判定
口腔内細菌溶液(約1×10 7 CFU/ mL )の 0.1mL を、次の3つの溶液に添加した。
1) 10mL のオゾン水(50mg/リットルの保存オゾン水を一ヶ月保存後は 1.5mg/L)、
2) 10mLの0.2%CHX( chlorhexidine digluconate、クロロヘキシジン、口腔内洗浄薬)
3) 対照として10mLの0.9%NaCl 、
添加後、0.5分(30秒)、1分、5分間、37℃で加温後、その 1 mLを 9 mLの培養液に加えて、オゾンの作用を停止させた。
その後、この細菌懸濁液を37℃で5日間培養し、コロニー形成数を調べました。
結果1 オゾンナノバルブ水の歯周病原因菌に及ぼす効果
オゾン・ナノバブル水(NBW3)が口腔内の歯周病原因菌である P.ジンジバリス と アクチノマイセテムコミタンス に対する殺菌力を検討した結果が下の図1です。
<図1のグラフの見方>
下の図1の縦軸は、コロニー形成数/㎖ を示しており、横軸は時間(分)を現しています。
グラフ右側に示されている、0.9% NaCl は、上記「方法2」の3)で、陰性対照の生理食塩水です。
NBW3は、オゾンナノバブル水を示し、上記「方法2」の1)のオゾン効果を調べた実験群です。
0.2%CHXは、グルクロン酸クロルヘキシジンを示し、上記「方法2」の2)の実験群です。
下の図1(a)は、口腔内常在歯周病菌P.ジンジバリスに対する効果を示し、
図1の(b)は、アクチノマイセテムコミタンスに対する効果を現しています。
<図1(a)と(b)のグラフから解ること>
上のグラフから、次の事が解ります。
1) (a)及び(b)のどちらの口腔内歯周病の原因菌の培養液に、オゾンナノバルブ水(NBW3)を加えてると、わずか30秒程度でコロニーの形成は100%阻害されました。
2) 他方、0.9%NaCl(生理食塩水)では、コロニー形成にまったく影響がありませんでした。
3) 口腔洗浄薬である 0.2%CHX(グルクロン酸クロルヘキシジン)では、(a)のグラフでは作用時間5分でコロニーの形成が完全に阻害されましたが、(b)ではオゾンナノバルブ水の効果と同様に、30秒でコロニー形成は完全に阻害されました。