オゾン (14)トリトンX-100とクロルヘキシジンの口腔細胞に及ぼす影響
オゾン (14)トリトンX-100とクロルヘキシジンの口腔細胞に及ぼす影響
「(12)オゾンナノバルブ水」では、下の報告で紹介される歯科領域における基本的な事を「研究の背景」とともにご説明さて頂きました。
そしてオゾンガスをナノサイズの気泡にすると、電解液中で6ヶ月以上安定状態を保つ技術を確立し、歯科領域における利用の可能性をご紹介させて頂きました。
「(13)オゾンナノバルブ水の歯周病菌に及ぼす影響」では、50mg/L のオゾンナノバルブ水(NBW3)30秒で、口腔内の歯周病原因菌である P.ジンジバリス と アクチノマイセテムコミタンス に対する殺菌効果力が見られた結果をご紹介しました。
今回は、ヒト口腔細胞に及ぼすオゾンナノバルブ水の細胞毒性についてご説明させて頂きます。
タイトル:Effects of ozone nano-bubble water on periodontopathic bacteria and oral cells – in vitro studies
訳:「オゾンナノバブル水が歯周病原菌および口腔細胞に及ぼす影響 – 試験管内での研究」
研究者:Sae Hayakumo, Shinichi Arakawa, Masayoshi Takahashi,他。
研究機関:Department of Periodontology, Graduate School of Medical and Dental Sciences, Tokyo Medical and Dental University,、東京医科歯科大学大学院歯科学研究科歯周病学科、他。
公表雑誌:Sci Technol Adv Mater. 2014 Oct; 15(5): 055003.
方法3 ヒト口腔細胞に対するオゾンナノバルブ水の細胞毒性
以下で使用する2種類の培養細胞は、口腔内の正常細胞の代用として、品質の安定した培養細胞株を使用しています。
オゾンナ・ノバルブ水(NBW3)が口腔組織を刺激する可能性が考えられることから、ヒト頬側の粘膜細胞株(EpiORL-200 )および歯肉細胞株(EpiGIN-100 )を用いた培養系で細胞毒性を検討した。
これらの細胞を37℃、5%CO 2の培養庫で一晩加温後、次の4つの各溶液を添加して口腔細胞に対する影響を検討した。
1) オゾンナノバルブ水(NBW3)を1時間および30分間、1、4、12、及び24時間暴露させた。
2) 0.2%クロルヘキシジンジグルコン酸(CHX)に4時間、8時間、16時間および24時間暴露した。
3) 滅菌脱イオン水(陰性対照)に30分間、および12時間および24時間暴露した。
4) Triton X-100(陽性対照、タンパク質を溶かす界面活性剤)をEpiGIN-100 には4,8、および12時間。EpiORL-200 には20、60、120分間暴露させた。
<用語説明>
クロルヘキシジンジグルコン酸(CHX)
・・・・抗菌性の口腔消毒薬。グラム陽性菌や陰性菌を含め広い抗菌性を有する。
また歯面に吸着してプラークの再付着を抑制することから、海外では洗口剤として広く使用されています。
歯周病の治療目的で使用される濃度は、 0.12~0.2 % ですが、アナフィラキシーショック例が報告されたことから、洗口液のグルコン酸クロルヘキシジン濃度は、0.05 % までに規制されています。(日本歯周病学会会誌、58 巻 (2016) 2 号から引用)
Triton X-100 ・・・・非イオン性の界面活性剤で、タンパク質-脂質間会合と脂質間会合を断ちますが、タンパク質間相互作用を断たないので、中性界面活性剤と見なされ、タンパク質を変性させません。
この実験では、細胞の透過性を高めて細胞死をもたらす物質として利用されていると思われます。
上記の1)~4)の曝露完了後、培養細胞を洗浄し、細胞の生存率をMTTアッセイ(3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニル)を用いて測定した。
MTTアッセ-による細胞の生存率は、「細胞増殖測定 細胞染色プロトコル」の23~29ページを参照して下さい。
さらに、細胞生存率が50%に低下するまでの暴露時間(ET 50、有効暴露時間)を求めた。 ET は、暴露時間(exposure time)の略です。
結果2 ヒト口腔細胞に対するトリトンX-100 の細胞毒性
<図2の見方>
陽性対照である 1% Triton X-100 に曝露させた歯肉細胞株(EpiGIN-100 )に対する生存率を(a)の縦軸に、
ヒト頬側の粘膜細胞株(EpiORL-200 )に対する生存率を(b)の縦軸に示してあります。
横軸は、トリトンX-100を作用させてからの時間(下のa)または分(下のb)を対数で示しています。
<図2のグラフから解ること>
1) (a)の歯肉細胞株(EpiGIN-100 にトリトンX-100を作用させてから12時間後の生存率が約9%で、50%生存率となる時間は、6.8時間でした。
2) (b)の粘膜細胞株(EpiORL-200 )にトリトンX-100を作用させてから、120分で約14%まで低下し、50%生存率となる暴露時間は、約47分でした。
結果3 ヒト口腔細胞に対するグルクロン酸クロルヘキシジン(CHX) の細胞毒性
<図3のグラフの見方と解釈>
0.2%のクロルヘキシジンジグルコン酸(CHX)を暴露させた歯肉細胞株(EpiGIN-100 )に対する生存率を(a)の縦軸に、
ヒト頬側の粘膜細胞株(EpiORL-200 )に対する生存率を(b)の縦軸に示してあります。
横軸は、(a)(b)共に時間を対数で示しています。
上のグラフから次の事が解ります。
1) (a)の歯肉細胞株(EpiGIN-100 )に対してクロルヘキシジンジグルコン酸の暴露で50% 生存率を示す時間は、約10.8時間でした。
2) (b)の粘膜細胞株(EpiORL-200 )に対してクロルヘキシジンジグルコン酸が暴露で 50 % 生存率を示す時間は、約8.4時間でした。