寒いときの運動 (3)負荷をかけた歩行
寒いときの運動 (3)負荷をかけた歩行
今回から、寒い時期における具体的な運動について、ご一緒に考えてみましょう。
負荷をかけた歩行
「負荷をかけた歩行」とは、筋力に負荷をかけた歩行という意味です。
筋肉に一定の負荷をかけることによって筋力は維持・向上させることができます。
この筋肉に負荷をかけたトレーニングのことをレジスタンス(Resistance:抵抗)運動と言います。
筋力トレーニング = レジスタンス運動 と二つは同じ意味です。
散歩や買物などの外出時に、「デイバック」、「リュックサック」、「バックパック」あるいは「背負い袋」に適度な重さの物を入れ、それを背負って歩くことで、「負荷をかけた歩行」、「レジスタンス歩行」が出来ます。
ただ歩くだけの場合には、少し早足で歩いても「有酸素運動」にしかなりませんが、「レジスタンス歩行」では、足腰の筋肉に負荷をかけられますので、「軽い筋力トレーニング」と見なされることから、「無酸素運動」ではありませんが、筋肉を刺激できます。
冒険家の三浦雄一郎のトレーニングでは、30kgのウェイトを身体につけて「ヘビーウォーキング」に励む姿がしばしば報道されます。
もちろん一般の方の場合には、3~5キロの負荷で構いません。
スパーマーケットでの買い物時や町中を歩く際に「負荷をかけた背負い袋」を背負って歩くだけで、筋肉に負荷をかけられます。
レジスタンス運動の効果
日常生活がより楽に行えるようになること(階段の昇降や買い物袋の持ち運びなど)
慢性疾患を予防、改善すること(骨粗鬆症、2型糖尿病、肥満など)
そのため筋力トレーニングは若者が行うイメージがありますが、その重要性はむしろ加齢とともに増加するといえます。
レジスタンス運動の効果
レジスタンス運動を始めたばかりの初期では、神経系の機能が向上することでより多くの筋線維が動員されるようになります。
その後、負荷に応じて筋線維が太く強くなっていきます。
レジスタンス運動を行うことで筋力、筋持久力、筋パワーが向上し、同時に運動の種類によっては関節可動域(柔軟性)、バランス能力の向上も期待できます。
そのため日常生活では転倒や障害の予防、スポーツの場面ではパフォーマンスの向上など、目的に応じて適切に行うことで多くの効果を得ることができます。
レジスタンス運動の種類
レジスタンス運動は大変多くの種類があります。その中でいくつかご紹介します。
自重でのスクワットは全身の筋力を強化することができます。特に大腿四頭筋、大臀筋を鍛えることができます。
足を肩幅に開いて立ち、お尻をうしろに突き出すように腰を下ろします。
膝だけを曲げて行うと、膝がつま先よりも大きく前に出てしまい膝に負担がかかるため、股関節を曲げることを意識します。
視線は自然と前を向き、重心がぐらぐらしないようにしながら椅子からの立ち座りを繰り返します(下の図1)。

自重での背面筋群の運動
背面の筋力は低下しやすく、猫背や肩こり、腰痛など様々な障害を引き起こします。簡単にできる背面筋群のレジスタンス運動の一つを紹介します。
この運動は、主に広背筋、大臀筋、ハムストリングスを鍛えることができます。
仰向けになり、膝を直角に曲げた姿勢から、息を吐きながら腰を持ち上げます。このときも呼吸は自然に続けます。腰を上げすぎず低すぎず、首から膝までが一直線の状態を維持します。腰を下ろすときは、首の方からゆっくりと床に下ろしていきます(図2)。

腕立て伏せ
腕立て伏せは、主に上腕三頭筋、体幹(前面部)を鍛えることができます。
図3のように手を床に肩幅より広めにつき、膝またはつま先を床につけます(図は膝を床についた状態)。
頭から床についた膝またはつま先が一直線の状態を保ったまま、肘を曲げて上体を下ろします。
このとき、腰が反るまたは曲がってしまわないように意識します。
肘を曲げて下ろせるところまで上体を下ろしてから、肘を伸ばして元の姿勢に戻ります。

レジスタンス運動の注意点
レジスタンス運動では、力を入れるため息が止まりやすくなります。
しかし、息を止めてしまうと血圧が上がりやすくなるため、運動中は意識的に呼吸を続けてください。呼吸は力を入れるときに息を吐くようにします。
また、レジスタンス運動では筋への負荷だけでなく筋が付着している関節や骨にも大きな負荷がかかります。
運動の前後には必ずウォーミングアップとストレッチングを行ってください。
運動後に適切にストレッチングを行うことで筋肉痛を軽減することができます。
健康上に不安がある人や運動習慣がない人は、レジスタンス運動を行う前に医師の診察を受け、運動禁忌がないことを確認することをおすすめします。
レジスタンス運動はどこでできるか
自重のレジスタンス運動は、自宅など場所を選ばずに行えます。
運動の内容によっては、家事の合間や電車での移動中など隙間時間で行うことができます。
また、フィットネスジムや、トレーニングルームを完備した体育施設でも自由にレジスタンス運動を行うことができます。
施設によって設置されているマシンや用具が異なりますので、自分のトレーニング方法に適した場所を選ぶことが継続のために大切です。