レビー小体病(シヌクレイン病) (3)レビー小体型認知症の検査
レビー小体病(シヌクレイン病) (3)レビー小体型認知症の検査
(3) レビー小体型認知症の検査
脳の神経細胞が減少する点では、老化に伴った減少であるのか、病気による減少であるのかを区別する必要がございます。
(A) 頭部CT検査やMRI検査
認知症の判断を行う方法として、頭部CT検査やMRI検査がありますが、これらの検査でわかる事は、脳の構造上の変化です。すなわち脳は加齢によっても委縮することから、初期段階にある認知症患者さんの脳の委縮が、果たして病気によるものなのか、それとも加齢によるものなのかを区別することができません。
(B) SPECT検査やPET検査
そこでレビー小体型認知症を早期に診断するためには、脳の構造変化を知る検査よりも、脳の機能変化を把握することができるSPECT検査やPET検査が有効だと考えられています。
これらの検査では、脳の血流状態などを画像にして表わす事が出来ます。従って、まだ脳の委縮が見られない初期段階にある認知症患者の異常を早期に発見することが期待されます。これらの検査については、以下の<解説>で補足説明します。
レビー小体型認知症患者さんの脳について
正常な脳内は血液中のブドウ糖や酸素を大量に取り込む事で、脳の細胞はエネルギーを獲得し、神経細胞の活動が保たれて記憶力や判断力、集中力等を高めています。
ところが、レビー小体は神経細胞の情報伝達物質を作る細胞に出現し、神経伝達物質が出なくなってしまいます。その結果、神経細胞間の情報伝達が阻害され、脳の働きが障害されます。
このレビー小体を構成している異常たんぱく質であるシヌクレインは、大脳皮質を中心に多数出現すると、(2)レビー小体型認知症の症状 で示した様々な症状が現れます。
その際、レビー小体型認知症患者さんの脳内では、頭頂葉や側頭葉の血流低下に加え、視覚との関連が深い後頭葉でも血流低下が拡大しています。
従ってSPECT検査やPET検査で調べる事により、脳に萎縮がなくても脳のどの部分の血流が低下しているかを調べてレビー小体型認知症の特徴的な血流低下パターンと照らし合わせることで、より正確な診断が可能になります。また、血流低下部位と、すでに発現しているレビー小体型認知症の症状との対応を検討する事も可能となり、診断に役立ちます。
<解説>
PET検査
アルツハイマー型認知症患者さんの脳は、神経細胞が委縮し、エネルギー源であるブドウ糖の消費が減るため、放射性物質をラベルした糖の取り込み低下を調べることのできる検査方法です。仮に萎縮がなくても、記憶に関わる脳の海馬領域のブドウ糖取り込み値の測定及び、脳が消費する酸素消費量や脳血流量を画像にすることもできるため、脳内の異常を詳しく調べられる点では、SPECT検査よりも優れています。ただし、PET検査が行える施設は限られています。
SPECT検査
SPECT(Single photon emission computed tomography)検査とは、シングル・フォト・エミッションCTの略語で、体内に注入した放射性同位元素の分布状況を断層画面で見る検査のことです。
脳の断面の血流状態を画像で確認することができるPET検査よりも一般的な検査方法です。レビー小体型認知症患者に見られる血流低下パターンと照らし合わせることで、脳の委縮がまだ見られない初期段階にある脳の異常を見つけることができるため、レビー小体型認知症の早期発見に役立つと考えられています。
なお、SPECT検査を受けられる実施医療機関はこちらで調べられますが、この検査を実施するかどうかは医師の判断によりますので、近医のかかりつけ医にご相談下さい。
MIBG心筋シンチグラフィー
MIBGとは、メタヨードベンジルグアニジンと言う物質の略名です。
この物質は交感神経終末から放出される神経伝達物質であるノルエピネフリン(ノルアドレナリンによく似た物質です。ノルエピネフリンはエピネフリンと共に、交感神経系を動かし、心拍を増加させ、脂肪からエネルギーを放出し、筋肉の反応を増強します。
そこでMIBGを投与すると、ノルエピネフリンが分布する副腎髄質や交感神経の作用する臓器(心筋)局所で交感神経系の分布および障害(機能)を画像化する検査です。
レビー小体型認知症やパーキンソン病では初期段階より心臓のMIBG集積が低下することから、他の認知症との鑑別に役立つ検査方法として近年注目されています。