かかりつけ医 (5)今後のかかりつけ医
かかりつけ医 (5)今後のかかりつけ医
細分化され過ぎた医療の問題
現在の専門医制度では、診療科が細分化されたり、臓器別であったりしています。
その結果、診療科が細分化されたことで、患者さんは自分の病気や病状にふさわしい診療科を受診することができるようになりました。
その一方で、細分化されすぎたため、どこを受診すればよいかわからないといった声も珍しくございません。
加えて、高齢者は複数の疾患をもった場合、いくつもの診療科を受診する必要に迫られます。
このことが、診療科ごとの医師の間で、必ずしも情報が共有されず、治療の優先順位についても協議されないまま、医療機関同士の連携にも問題を残しながら、同じような投薬がなされていたり、薬物間の相互作用については、より複雑な状況を招いていると考えられます。
すなわち、細分化された医療では、診療に時間と医療費をかけたものの、より適切な医療を効率的に受けにくくなっているとの指摘もあります。
この問題を解決するため、適切な診療科を選択してくれる総合診療科を新設する病院が増えてきました。
今後のかかりつけ医は、総合診療医となるか?
ここでは、平成25年(2013年)に厚生労働省 医政局 医事課 医師臨床研修推進室が示した「専門医の在り方に関する検討会 報告書」(PDF:5237KB) に基づいて、私なりに以下のように整理してみました。
上の報告書が示す総合診療医は、従来の領域別専門医が「深さ」を特徴としているのに対 し、「扱う診療の広さと多様性」に対応できる医師を、一つの専門医として位置づけようとしています。
さらに、総合診療医の社会的役割の範囲は、地域の医療、介護、福祉行政、保健等の様々な分野との連携のリーダーシップをとるような役割も期待されています。
従って、総合診療医には、地域における医療、介護、福祉分野と連携しながら、基本診療能力と一定の領域別専門力を兼ね備えた医師としての役割が期待されます。
その一方で、大病院における専門医の医師にも社会的役割を認識し、専門医でなくても対応できそうな患者さんには、地域の総合診療医を紹介し、大病院としての機能を充実させていくことが期待されます。
但し、これまでの専門医制度の中で、新たに「総合診療医」を指導できる医師の養成については課題が残されており、2018年4月からスタートしたものの、この総合診療医と言う専門医制度の定着にはまだ時間がかかりそうです。
<私見>
医療制度に限らず、多くの改革案は、中央あるいは地域拠点病院の整備さえしていれば、中小の病院や診療所は、拠点病院に対応するだろうと言う演繹的な発想に基づく改革でした。
しかしながら、総合診療医の位置づけは、これまでの改革案とは異なり、帰納的に末端の小規模診療所レベルの改革で、全体のデザインを見なおそうとしているように思われます。
実際のところ、大病院の専門医の先生が生活習慣病と腰痛などの整形外科領域の患者さんを総合的に診ていくことは、あまり期待できません。
従って、高齢者の様々な病状の診療をされている総合医の先生が、必要に応じて専門医の先生にも診ていただけるような仕組みが、それぞれの医療機関にとっても、そして何よりも患者さんにとって良いのではないでしょうか。