血圧変動と認知症のリスク (1)血圧の変化と認知症の関連
血圧変動と認知症のリスク (1)血圧の変化と認知症の関連
日々のご家庭における血圧測定で、長期にわたる血圧の変化と認知症発症との関係を調べた九州大学の久山レポートをご紹介させて頂きます。
日々の血圧の測定結果から、将来の認知症発症リスクを知ることが出来そうですので、一つ一つゆっくりと時間をかけてご説明させて頂きます。
タイトル:Day-to-Day Blood Pressure Variability and Risk of Dementia in a General Japanese Elderly Population
訳:「一般の高齢者における日常の血圧変動と認知症のリスク」
研究者:Emi Oishi, MD, Tomoyuki Ohara, MD, PhD, Satoko Sakata, MD,他。
研究機関:疫学および公衆衛生学科、医学および臨床科学科、神経精神科、およびコホート研究センター、九州大学大学院医学研究科
・・・・上記報告の要約を紹介したサイトは、家庭血圧の日間変動性は,血圧値そのものとは独立して認知症発症リスクと関連する
背景
血圧は1日の中でも変動があり、週、月、季節、さらには年単位で測定していくと、長期変動が見られることがあります。
このような血圧の変動(BPV)のなかでも、長期的な変化は臓器の損傷や心血管疾患の進行に関わっていることが明らかにされてきました。
また認知症においても、血圧変動(BPV)の影響が注目され、血圧変動(BPV)と認知発症リスクの関連性に注目が集められています。
しかしながら、認知症と血圧の研究の多くは、数か月または数年の血圧によって評価された調査結果に過ぎません。
加えて、単に血圧の情報だけでなく、動脈の伸展性、降圧剤使用の有無、および毎日の身体活動などの要因も血圧変動(BPV)に寄与することから、これらの要因を含めて血圧変動に及ぼす影響の分析が期待されています。
その一方で、24時間以内の短期血圧の変動は、主に中枢および反射性自律神経調節の影響が反映されています。
他方、長期血圧変動は、血管疾患や認知機能低下の発生と関連していると示唆される報告が示されました。
そこで家庭用の血圧計で長期にわたる血圧測定を行い、血圧変動と認知症発症リスクの関係を調査しました。
方法1 調査対象
九州の福岡市郊外にある久山町の人々の年齢と職業分布は、1960年代以来、日本全体とほぼ同じでした。
そこでこれまでも40歳以上の住民の健康状態と神経学的状態に関する調査が繰り返されています。
さらに、Mini-精神状態検査(MMSE)、長谷川の認知症尺度、長谷川式簡易知能スケール改訂版により、認知症の追跡調査も実施して来ました。
2007年と2008年に、あらかじめ認知症と判定された方を調査から除外し、この血圧変動の調査を久山町在住者1674人で実施し、5年間(2007〜2012年)追跡調査しました。
1674人の被験者(男性738人、936人)がこの調査研究の対象者としてご協力頂きました(下の表1)。
家庭血圧は、毎朝3回測定してもらい、
自宅で計測した収縮期血圧と拡張期血圧から、変動係数(CoV)を計算し、この変動係数に応じて4つの群(Q1〜Q4)に分け(四分位数に分類し)て統計解析しました。
上の表1に示した通り、各郡の平均年齢、収縮期血圧、拡張期血圧、高血圧や糖尿病の割合には差がないことがわかります。
こうして高齢者の血圧を日々測定し、血圧の変動を長期間調べることで、認知症の発症との関連性を調べました。
方法2 家庭血圧測定と日々の変動性評価
被験者は、毎朝座位で5分以上休憩した後、起床後1時間以内、朝食前に毎月28日間、デジタル電子血圧計(HEM- 7080IC;オムロンヘルスケア)で血圧を測定してもらいました。
家庭血圧計で測定した血圧は、日々の収縮期血圧(SBP)および拡張期血圧の変動から、それぞれ次の式で変動係数(CoV)を計算しました。
(ご自身の血圧の変動係数を求めたい場合は、こちらのサイトをご利用下さい。)
変動係数(CoV値、%)= 標準偏差SD /平均血圧x 100
次に、計算された変動係数は、以下の通り、に四分位数に分類されました。
・・・これは収縮期血圧及び拡張期血圧の変動係数によって、Q1~Q4の4つに分類した事を現しています。
分類の基準とした変動係数は、以下の通りです。
収縮期血圧(SBP)の変動係数:
Q1:四分位数1、≤5.07% ・・・・血圧の変動が少ない群。
Q2:四分位2、5.08~6.21%;
Q3:四分位3、6.22~7.59%;
Q4:四分位数4、≥7.60%。 ・・・血圧の変動が大きい群。
拡張期血圧の変動係数:
Q1:四分位1、≤4.83%;
Q2:四分位2、4.84~5.99%。
Q3:四分位3、6.00~7.60%。
Q4:四分位数4、≥7.61%。
今回は、ここまでで長くなりましたので、結果については次回ご説明させて頂きます。