病院再編2019 (11)市立伊勢総合病院
病院再編2019 (11)市立伊勢市民病院
「(1)対象とされる病院は?」で、厚生労働省が病床数の削減で上げた三重県内の医療機関は、三重県厚生連三重北医療センター菰野厚生、三重県厚生連大台厚生、済生会明和、町立南伊勢、市立伊勢総合、桑名南医療センター、亀山市立医療センターであることを示しました。
今回は、上記の医療機関の中で市立伊勢総合病院に焦点を絞って考えて見ましょう。
市立伊勢市民病院
ウィキペディアによれば、同病院の2016年度における医業収支は、9億5100万円の赤字であった。
そこで経営基盤強化のため、従来兼務であった院長と管理者を分離する条例改正案が2018年3月議会に提出された。
2018年9月28日の伊勢新聞では、実質の赤字を2億8千万円まで減らし、病床利用率は60・8% までわずかだが改善させた。
そして2018年9月に旧病院の隣に新築移転し、新装され2019年1月から稼働しています。
院長と管理者を分離するとは?
病院事業管理者とは、地方公共団体(伊勢市)の病院事業は、開設者である首長(伊勢市長)と同等の権限で病院事業を経営する特別職を意味します。
市立病院の場合には、首長である市長が任命し、医師が就任します。
このように医師に権限を与え医療の充実を図ることと、医療機関として経営を考えた事業運営が出来るかどうかについては、極めて疑問であることは明らかです。
その理由は、医師に出来ることは、それまでに経験してきた診療科における診療だけであり、経営に関する実績や経験はまったくありません。
それどころか、病院事業の詳細や職員の給与規定でさえほとんど理解できていません。そのような終始バランスの把握も出来ない医師に医療機関としての経営を担うことは、ほとんど不可能です。
しかしながら伊勢市としては、市立病院の経営を建て治さなければ、地域医療の崩壊の危機に立たされる事態にまで追い込まれました。
そこで、医療の質の向上に携わる院長と、経営責任を担う立場を上記の条例改正により分離させました。
その市立伊勢総合病院の病院事業管理者である佐々木昭人氏の挨拶はこちら。・・・一言で言い換えるなら病院の経営コンサルの立場の責任者と言えそうです。
2017年3月に市立伊勢総合病院は地域医療支援病院として三重県知事に承認され、
2019年1月に、新病院開院。 ・・・改善点は次の4点です。
1) 病床数の変更・・・300床(一般180床、ホスピス20床、地域包括ケア60床、回復期リハ40床)
2) 病床数を減らしながらも、急性期医療とその後の回復期医療としてのリハビリ、3) 在宅療養につなげるための地域医療病床、
4) 終末期のためのホスピス病床の確保しました。
2019年9月には、三重県より災害拠点病院として指定されました。
・・・こうして積極的に地域医療の中心的役割を担う病院として再スタートしたところです。
地方自治を担う各都道府県知事はどうする?
厚生労働省が病床数削減を求めた病院名を示しましたが、地域医療の問題は各都道府県知事の権限と責任で決定される事項です。
加えて、民間病院については経営母体であるそれぞれの医療法人や経営者の判断に委ねられるべき事項です。
すなわち各都道府県は、地方自治体としての判断を成すべき事案であり、厚生労働省が条例で病床数の削減を法的に決めたものではありません。
従いまして、地方自治体としての自立度が試される局面かも知れません。
これは地方行政が地方公共団体に過ぎないのか、地方自治体としての意識を持っているのかが問われていると考えることも出来ます。
少なくとも市立伊勢総合病院に関して、伊勢市自らが改革に乗り出しており、三重県も支持してきた経緯を踏まえた対応を期待したいと考えます。