病院再編2019 (12)地域医療を守る
病院再編2019 (12)地域医療を守る
地域医療の危機は、すでにいくつもの市町村で現実の課題となっています。
その具体例をご紹介させて頂きますが、その原因について簡単に触れておきます。
1.地域医療の危機を招く原因
1)医師不足 ・・・医師の数は厚生労働省の方針により増えることはありません。
2)看護師不足 ・・・総合病院では3交替勤務の労働条件が改善されていません。
3)地域住民の意識の問題 ・・安易な救急搬送や時間外受診を控え、健診を受けると共に、健康維管理を考えた生活をする
上記の内、1)と2)の解決は、この数十年変わっていません。
他方、3)については、医療の財源を守ることにもつながることから、地域住民の安易な時間外受診の自粛が求められています。
2.地域医療が危機に至った地域
(A)宮崎県延岡市 ・・・「地域医療を守る条例」制定
上記のリンク先が示すとおり、県立延岡病院における医師の退職が重なり、次々に診療科を閉鎖。
そこで延岡市医師会の努力や新たな診療所の開業、市外の医師や大学からの応援などにより、夜間救急医療センターで診療体制を順次拡充。
加えて、市民が地域をあげて医療を守り、さらに健康長寿を目指す町作りを進めるために延岡市では、「地域医療を守る条例」を制定しました。
上記を文字で並べると簡単に解決したかのように思われますが、2007年頃、医師の退職が続いた主な理由は、休日や夜間の軽傷者のコンビニ受診が急速に拡大し、医師の過酷な勤務が改善されなかったとされています。
その根拠は、「安易な時間外受診の自粛」を呼びかけた「延岡市議会 2008-12-09 平成20年第10回定例会(第2号12月 9日)」の記録から当時の延岡市長である首藤正治氏の答弁から明らかです。
この延岡市の例は、地域医療の崩壊の危機に対し、市行政のみならず周辺医療機関や医師会に加え、 2009年には自治会や商工会議所が中心となり、署名活動をスタート。
県に医師の補充を求めた上で、市民には安易な時間外受診を控えることなどを呼び掛けました。
署名は、当時の延岡市の人口(約13万人)を超え、1カ月で約15万筆が集まりました。
すなわち、市の人口を超える署名を集めなければならないほど、医療崩壊の危機に直面していたと見ることが出来ます。
そしてこの署名は、当時の宮崎県知事であった東国原英夫知事に提出されました。
さらに延岡市は「延岡市内に医療機関の新規開業を促進するための補助制度」を制定しています。
加えて、医療機関に限らず、創業支援、他にも移住・子育て住まい支援事業支援、介護支援ボランティア、少子化対策や育児サポートのために「子育て支援施設」の建設にも乗り出しています。
(B)「地域医療を守る条例」を制定した地域
福井県加賀市、山口県周南市、広島県尾道市、福島県いわき市、北海道根室市、他にも地域医療の崩壊に直面した地域は、それぞれの地域として医療環境を改善し、再生に向けた取り組みが進められています。
地域医療学センターが目指す医師の育成 ・・・「みんなで守り・育てる地域の医療」:自治医科大学 地域医療学センター 梶井 英治先生の リンク先24ページから以下に引用させて頂きました。
地域医療学とは
地域医療の現場で、地域社会や地域住民の公衆衛生や医療を提供する取り組みです。
上記の地域医療学センターの目的は、地域医療を担うことが出来る医師の育成です。
地域医療を担うことが出来る医師とは
地域住民の需要に応えることの出来る医師であり、患者さんの医療上の問題に取り組む医師です。
診療所であれば疾患の治療に留まらず、病気の予防や介護といった本人及びご家族の状況も踏まえた助言で、地域での生活をサポートします。
他方、専門医制度が進んだ大病院の専門医の医師は、主にその医師の専門とする診療科の疾病あるいは臓器別の疾患の診断と治療に専念できます。
私見
これらの役割分担が明確にされることで、大病院へ集中する軽症患者さんを減らすことが出来ると期待されます。
また、専門的な治療の後、あるいは退院後は地域の診療所に引く次ぐことで、生活スタイルや家族の負担を考慮した療養生活を過ごせることが期待されます。