研修医のマッチング (6)指導医ってどんな力?
研修医のマッチング (6)指導医ってどんな力?
研修の現状はどうか?
基本理念には、「臨床研修は、医師が、医師としての人格をかん養し、 ・・・・中略・・・・基本的な診療能力を身に付ける。」とあります。
・・・・これで医師になって、臨床研修に入ってから医師としての人格を育てられ、基本的な診療能力を身に付けることとされています。
しかしながら、臨床研修を通して、基本的な診療能力を具現化すると言う事と、医師としての人格の形成は別問題である事は明らかです。
また、大病院ほど医療の専門化、細分化が進んでいますので、そこで臨床研修を受ける研修医は、必然的に専門医を目指すことにつながらないでしょうか。
このような状況に加え、各学会の専門医・認定医制度は専門医・認定医教育指定病院で行わなければ認められないと言う方向性にも課題があります。
・・・例えば、無医村や僻地医療対策に取り組もうとする医師は、より広範な診療範囲を目指す事になりますが、そのような医師を訓練する病院はどれくらいあるのでしょうか?
さらに研修指定病院ですべての診療科が各医学会の指定病院であるとは限らないため、研修先病院で(前期及び後期の)研修後も専門医、認定医、あるいは指導医のいる医療機関で専門医の勉強を続けることとなればならない状況では、多くの医師が都市部に集中して研修を受けることになります。
他方、公立病院では、予算の関係で研修医の定員枠 も固定 されているところが多く、有名な研修病院では競争率が非常に高い状況にあります。
これらのことから、簡単に市中病院で研修を終えたからと言って、そのままそこで専門医資格のための指導医がいなければ、指導医のいる病院へ移動することは珍しくありません。
これらのことを考えると、やはり出身大学に残ることが、将来のために必要と判断している医学生は少なくない状況は、それほど変えられていないように思われます。
その結果、またしても大学の医局の支配下に留まることとつながるでしょう。
卒後研修はどこで受けるのが良いか?
卒後研修希望者に「 どこの病院で研修を受けのが良いと思うか?」との質問をすると次の条件が上げられることが多い。
1. 研修病院の診療の質が、最新の医療であること、最新の医療設備が整っていること。
2. 研修の質が良いこと。指導医による研修内容が明確にされていること。
3. 研修医の待遇としての給料、身分、宿舎施設が整っていること。
4. 認定医、専門医研修指定病院か否か。指導医がいるか。学位取得が可能か。
5. 研修修了後の就職が可能か。大学との関連性。
・・・などが上げられていまする。
しかしながら、医学部大学院教育は、その多くで教育内容が整っていません。
ほとんど指導がないと言う事実から考えても、まだ始まって十数年の臨床研修において、指導を待ち望んでもほとんどなされていないのが現状です。
指導医ってどんな力?
医師臨床研修制度 の実態と今後の方向性 によれば、大病院ほど研修指導はほとんどなされていない様子が伺えます。
また、厚労省のアンケート調査でも大学病院研修医の43.4%、大学以外の研修病院研修医の23.8%が研修体制に不満足と答えています。
加えて、ベッド数が多い病院程その傾向は著明であったとされています。
その一方で、300床未満の病院の研修医は80%が「熱心な指導者がいる」、「研修理念に賛同」などと好感を寄せている実態も明らかにされています。
この原因は、そもそも指導医の実態は、臨床経験7年以上で、2~3日の講習会に参加するだけのようです。
すなわち、厚労省としては医師の偏在の解消が主な目的であり、どこかの病院で前期臨床研修を義務つけることで、出身大学から卒業生を切り離すことが目的にだったかのように思われます。
しかし、実態は研修後に専門医を指導できる指導が在籍する病院を多くが選んでいますが、実態は「研修体制に不満足」である事に甘んじながらも「専門医を目指している」という状況にあると思われます。
まだ課題は多い
その一方で、後期研修スケジュールでも「総合診療医」や「総合内科」のための研修スケジュールはまだ極めて少ない状態です。
そのため、内科全体の臨床に携わりたいとか、整形外科全般の臨床医を目指すための研修スケジュールはほとんどありません。
その結果、大病院では、内科が呼吸器内科、循環器内科、消化器内科、内分泌内科、他にも感染症内科など様々な診療科に分かれています。
その結果、指導医であっても、ごく一部の臨床に携わっているだけの指導医であり、内科全体を指導できる実績はほとんどありません。
これらの背景から、専門医以外の一般臨床医を目指そうとしている医師にとっては、研修先の選択が限られた状態にあります。
このことが、無医村や過疎地医療の改善、医師の偏在をほとんど改善できていない実態です。
まして「医師としての人格形成」など一言も触れられていません。
・・・・最も人格を形成する段階として、卒業した医師に求めている事事態、その時期を逸していると思われます。