リンゴの皮 (1)ジョナゴールドの皮に含まれるポリフェノール
リンゴの皮 (1)ジョナゴールドの皮に含まれるポリフェノール
このシリーズでしばしば出てくるポリフェノールやフラボノイド、アントシアニンなどについては、下の用語説明で触れています。
ポリフェノールは、フラボノイドやアントシアニンなどに共通の構造(ポリ=多数の、フェノール=ベンゼン環に水酸基OH)が付いた構造を指しています。
今回の「リンゴの皮に含まれるポリフェノール」には、フラボノイドやアントシアニンが含まれるという意味で使用しています。
医者を青くするもの (2)リンゴの皮 で、リンゴの皮に含まれる成分が降圧(血圧を下げる)作用を示すことをご紹介させて頂きました。
しかしながら、降圧作用を発揮する具体的な物質についてまでは触れませんでした。
今回は、以下の報告からより具体的な降圧作用を示す物質とその効果についてご紹介させて頂きます。
タイトル(右のリンク先28ページ):INHIBITION OF ANGIOTENSIN CONVERTING ENZYME BY FLAVONOID-RICH APPLE PEEL EXTRACT, FLAVONOIDS AND SELECTED METABOLITES
訳:「フラボノイドの豊富なリンゴの皮抽出物であるフラボノイド類とその対処産物によるアンジオテンシン変換酵素の阻害」
研究者:Nileeka Balasuriya
研究機関:ダルハウジー大学(Dalhousie University)、カナダ
背景
高血圧は単に血圧が高いだけに留まらず、心血管疾患、脳卒中、腎臓病と糖尿病につながる進行性の疾患です。
そして血圧の調節は、レニン・アンギオテンシン・アルドステロン(RAAS)の過剰な活性化が、高血圧を進行させる主な原因とされています。
中でもアンジオテンシン変換酵素(ACE)は、前駆物質である アンギオテンシンI を アンギオテンシンII に変えることによって、RAAS(レニン・アンギオテンシン・アルドステロン系)を稼働させる重要な役割を果たしています。
・・・・それは アンジオテンシンII が血圧を上昇させるメカニズムで主要な役割を担っているからです。
これらの背景からアンジオテンシン変換酵素(ACE)の阻害剤は、RAAS(レニン・アンギオテンシン・アルドステロン系)の過剰な活性化を抑制し、高血圧の治療に広く使われています。
・・・・高血圧の治療薬には、ACE阻害剤であるカプトプリル、ラミプリル、エナラプリルマレインなどが使用されています。
他方、天然の生理活性分子にもACEを阻害する物質が多数報告されており、アントシアニン、フラボノール、テルペンのような代謝物質もACE阻害活性を示します。
フラボノイドは、一般に果物に含まれる物質であることから、ビタミン様物質として位置づけられています。
このフラボノイドは、生体内でアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬として降圧作用を示し、中でもリンゴは最も人気のある果物です。
特にリンゴの皮に含まれるポリフェノール量は、果肉の6倍も高い事が知られています。
この事から、リンゴの皮成分には有効なACE阻害効果が期待されています。
結果1 リンゴに含まれるフラボノイド類の含有量
上の表の右上に添えた「DW」は、乾燥重量を意味しています。
そして「mg/gDW」は、リンゴの皮の乾燥重量1g(グラム)当たりの各成分の量(mg)を現しています。
上の化学構造は、左から
①ケルセチン、②ケルセチン3-O-ガラクトシド、③ケルセチン3-O-グルコシド、④ケルセチンラムノシド、⑤ケルセチン3-O-ルチノシド、及びカテキンとエピカテキンの構造を示しています。
上の表4.1からでリンゴの皮に含まれるポリフェノールで乾燥重量(DW)が多いものは、②ケルセチン3D-ガラクトシド、④ケルセチン3O-ルチノシドであることが解ります。
用語の整理
このシリーズでは、ポリフェノールの括り(くくり)に含まれるフラボノイド、フラバノール、アントシアニンアニン、あるいはシアニジンと言った区別のつきにくい物質が沢山出てきます。
これらの分類やグループ分けの概要を下の図で、おおまかに下の分類表ご確認いただきたいと思います。
ポリフェノール(多価フェノール)とは,同一分子内に2個以上のフェノール性水酸基(ベンゼン環,ナフタリン環などの芳香族環に結合した水酸基)をもつ化合物の総称(下図)です。
赤ワインに豊富に含まれるポリフェノールを摂取すると、動脈硬化や脳梗塞を防ぐ抗酸化作用、ホルモン促進作用が向上することが明らかにされています。
このポリフェノールには、上の分類表に示されている通り、フラボノイド系物質の他に、被フラボノイド系物質に分けられます。
そしてフラボノイド系物質の中に、カテキン、アントシアニン、ケルセチンなどが含まれます。
フラボノイドとは,ベンゼン環2個(下図のA環とB環)を3個の炭素原子(No.2,3,4)でつないだ構造(ジフェニルプロパン構造)を有するフェニル(A環とB環)化合物群の総称です。
そしてこのフラボノイドの中に中にカテキン、タンニン、アントシアニンやフラバンなどが含まれ、色素としての役割や抗酸化性,抗変異原性,抗ガン性,血圧上昇抑制,抗糖尿病性および抗アレルギー性など、それぞれ様々な効果が明らかにされています。
この辺りの分類と名称は、薬学系の方はこれらの名称で呼びますが、理学系の化学者や工学系の方は、化学構造名で、構造の違いを把握しています。