高齢者白書 (10)終末期医療について1
高齢者白書 (10)終末期医療について1
前回の「(9)自宅で療養することが困難な理由」では、
「人生の最終段階について、家族との話し合い」について示しています。
高齢者の半数以上は、家族と全く話し合っていません。
一応、話し合ったことがある割合は、39%。
詳しく話し合っているは、2.8%に過ぎません。
・・・・と述べました。
今回は、「高齢者白書」から離れて、終末期医療についての基本的な概要をご紹介させて頂きます。
終末期医療について
終末期医療については、基本的な考え方そのものが一般の方々にはほとんど浸透していません。
生前の意思(リビングウィル)は、病気の進行や本人の心身の状態の変化に伴い変化していく可能性があります。
そこで、心身の状況変化に応じ、ご家族や医師と「繰り返し話し合う」ことが強調されてきました。
また、心身の状態に変化がなくても、以前示した「生前の意思(リビングウイル)」に変化がないことを確認するためにも「繰り返し話し合う」事が勧められています。
その内容は、「死が近い場合に受けたい医療や受けたくない医療について、ご家族と話し合い、その内容を書面に残し、医療機関にも提示する」ことが求められます。
その理由は、自分で判断できなくなった場合に備えるためと医療機関側の責任回避のためです。
そしてその書面に従って医療機関は、緩和ケアに治療方針を変更したり、あるいは延命治療はどこで中止するか、徹底的に続けるのか、などについて事前に医療機関と本人、家族の間で確認します。
しかし過去には、これらの手順・手続きが曖昧で、意思確認が不確かな場合には、時に医療機関側が起訴された例は珍しくなかったからです。
厚生労働省は、2018年3月に「人生の最終段階における医療の決定プロセスに関するガイドライン」の改訂 を公表しました。
・・・・それ以前の平成26年(2014年)版のガイドラインとの違いは、「積極的安楽死は認めない」とする内容に改訂されています。
上のリンク先にある内容は、簡単すぎるので、以前(平成26年版)の報告書をご覧頂きたいと思います。
人生の最終段階における医療に関する意識調査報告書(PDF:5,306KB)をご覧頂かなくても概ね想像出来ます。
何をどう想像できるか?について整理して述べます。
1) 前回の「(9)自宅で療養することが困難な理由」で述べたとおり、「人生の最終段階について、家族との話し合い」で詳しく話し合っているは、2.8%に過ぎません。・・・と述べました。
つまり、これでは「ご本人の意思を医療機関側に伝えたこと」にはなりません。
2) 家族で詳しく話し合っただけでも、医療機関側に「生前の意思(リビングウイル)」が書面で伝わってなければ、医療機関は治療中止により訴訟のリスクを負うことになります。
3) その結果、「生前の意思(リビングウイル)」は、終末期医療に反映されません。 ・・・すなわち、医療機関は「生前の意思(リビングウイル)」に基づく治療方針の変更や決定、あるいは中止を出来ません。
人生の最終段階における医療に関する意識調査報告書(PDF:5,306KB)は、100ページを超える内容ですが、
より具体的な「生前の意思(リビングウイル)」を示す手順について示す事は、見方によっては「死に方の選び方」につながる面もあるため、医療機関側も治療の途中で「人生の最終段階」について、本人にはもちろんの事、ご家族の方にも説明しにくい部分が少なくないからです。
平成30年版の「「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」解説編[PDF:210KB]では、「 人生の最終段階における医療・ケアの方針の決定手続」として、リンク先の4-5ページに次の二つを明確に示しています。
(4ページ:「2 人生の最終段階における医療・ケアの方針の決定手続 」参照。)
1)本人の意思確認が出来る場合
2)本人の意思確認が出来ない場合
次いで、「複数の専門家からなる話し合いの場の設置 」まで示されています。
次回は、「生前の意思(リビングウイル)よりも、一歩進めたアドバンス・ケア・プランニング(ACP)」についてご紹介させて頂きます。