人生の引き際 (3)安心の基準の違い
人生の引き際 (3)安心の基準の違い
安心の基準の違い
「高齢者白書 (1)地域で安心して住み続けるために必要なこと」で示した通り、「安心して住み続けるために必要なこと」の上位6項目は次の通りでした。
「近所の人との支え合い」(55.9%)が最も多く、
続いて「家族や親族の援助」(49.9%)、
「かかりつけ医等健康面での受け皿」(42.6%)、
「公的機関からの援助」 (35.2%)、
「移動手段や商業施設などの生活環境の利便」(30.1%)
しかしながら、「人生の引き際 (2)フランス人の生き方」で推察したように、ヨーロッパの国々では、歴史的な経緯から「争いがないこと」が安心して住み続けられることの重要な要因であると思われます。
・・・・すなわち、「安心の基準」が日本人とフランス人とでは大きく異なります。
日本人の安心とは、「安全」を当たり前のこと。
つまり、安全を前提とした「豊かな老後」が暮らせる様々な環境を求めているのではないでしょうか。
争いを避けるために
上記の国レベルの考え方を、個人レベルに落として考えてみましょう。
日本人が地域社会でトラブルを避けて暮らすために、周囲との関わりについて積極的には取り組まないことと考えているのかも知れません。
その結果、地域における人間関係では、どうしても表面的な関係になってしまいます。
しかし、何かの地域の問題について地域や近所で話し合わなければ解決できない問題があった時、あるいは災害時のように地域で取り組まなければならない時、深く議論することで信頼関係が築けることもあれば、感情的な対立となって返って関係がギクシャクしてしまうこともあります。
夫婦関係でも類似の面があるのではないでしょうか。
・・・・この部分を何とか「互いを尊重しながら乗り越える努力」をしなければ、信頼関係を築くことは難しいのではないでしょうか。
言い換えれば、トラブルを避けるために面倒な問題を先送りして表面的な関係に留まるか、あるいは互いの意見を尊重しながらより良い方向性を見いだせるかに関わっているのではないでしょうか。
このことが、「死を迎える高齢期や終末期」において、もし一人暮らしであった場合には自立した生活を維持できているかどうかの事態をも想定した準備をしておかれるなら、何ら問題はありません。
その理由は、「争いを避けるため」に周囲と関わりを持たないようにする事が、結果的に「孤立」することになってしまう可能性が広げられるからです。
・・・都市部における孤独死はその結果ではないでしょうか。
他方、見方を変えるなら「周囲との関係を維持することで、争いが避けられるだけでなく、信頼関係や安心が維持されることで孤立を避けられる」可能性が生まれます。