わかりやすい血圧の話 (3)末梢血管抵抗を上げる末梢血管の部位とは?
わかりやすい血圧の話 (3)末梢血管抵抗を上げる末梢血管の部位とは?
「(1)血圧とは」では、平均血圧=心拍出量×末梢血管抵抗 ・・・・式(1)
・・・・・上の式(1)から、
a) 心拍出量が増えると血圧が上がる。
b) 末梢血管抵抗が上がれば血圧は上がる。・・・と言うことが解ります。
・・・とご説明させて頂きました。
そして「(1)血圧とは」では、「a)心拍出量が増えるのはどんなとき?」 についてご説明させて頂きましたので、
今回は、「b) 末梢血管抵抗が上がれば血圧は上がる。」に焦点を絞ってご説明させて頂きます。
「末梢血管抵抗」を上げる末梢血管の部位とは?
それでは、末梢血管抵抗を上げる身体の部位について考えてみましょう。
末梢という名称から、「手足」を想像されるかと思われますが、
手足の血管は手足を動かす機能を支える栄養血管ですので末梢であっても、それほど細くありません。従いまして、手足の血管は血管抵抗を上げません。
また、静脈は毛細血管を経た後に血液が流れる管ですので、毛細血管と静脈は、血圧を考える上で除外されます。
・・・組織学的にも毛細血管は、内皮細胞と基底膜だけで構成されていますし、
静脈は、動脈に比べて弾性繊維を欠き、平滑筋組織も薄く、毛細血管後に走行するため血圧は低いです。
従がいまして、残りは運動機能には関わらない内臓の「細動脈」が抹消血管抵抗を上げる血管としてい絞られます。
血圧で血管抵抗となる細動脈の部位は、下図で紫色の楕円で囲まれた3つの部位です。
(下図は、名古屋大学循環器科のサイトから引用させて頂きました)
・・・・すなわち、腎臓の細動脈(糸球体の血管)、目の網膜の細動脈、それと脳の細動脈です。
・・・・この三つの細動脈で動脈硬化が進むことで血管抵抗は上がりますので、血圧も上がります。この中で、最も血圧に関係する部位は腎臓の細動脈です。
上記3つの部位は、いずれも高血圧に伴って障害を受けやすい部位でもあります。
それでは末梢血管の抵抗を上げる原因にはどのようなものがあるか考えて見ましょう。
下の図は、「高血圧の発症機序について教えてください.」から引用させて頂きました。
(上記リンク先の説明文には、詳細な説明がございますが、大事なことは下図の理解です)
末梢血管抵抗を上げる物質とその原因
下図の中央には「血圧=心拍出量×末梢血管抵抗」とあります。
その下に赤丸で囲んだ「血管拡張因子の低下」と「血管収縮因子の増加」が「末梢血管抵抗」を上げる事を示しています。
具体的な「血管拡張因子」と「血管収縮因子」とは、以下の通りです。
但し、細かな分子レベルの説明は、一般の方には必要ありませんし、関心のある方だけが読み流して頂ければ幸いです。
このような詳細な機序があるということだけを受け留めて頂ければ「血圧」の理解には充分です。
抹消の血管拡張因子と血管収縮因子
血管弛緩(拡張)因子として、プロスタサイクリン(PGI2) ・一酸化窒素(NO)・血管内皮由来過分極因子が明らかにされていますので、これらの産生を抑制する事につながる高脂血症や動脈硬化、自己免疫疾患などが血管の抵抗を上げると考えられそうです。
・・・・プロスタサイクリンは、血管内皮細胞から産生され、血小板活性化の抑制作用と血管平滑筋の弛緩作用があります。
・・・・一酸化窒素は、血管内皮細胞から産生され、血管拡張作用(降圧作用)があります。
・・・・血管内皮過分極因子とは、血管内皮から産生される血管弛緩因子で、まだ物質としての特定はされていません。
これらの血管内皮細胞から産生される物質の説明については、こちらのサイトを参照して下さい。
そして内皮細胞障害によって起こる循環疾患についても上記サイトに紹介されていますので、整理しておきましょう。主に生活習慣病です。
また、血管収縮因子として、アンギオテンシンII、トロンボキサンA2などが知られていますので、血管内皮における炎症時に血小板から遊離され凝集因子、血管・気管支収縮作用を示す物質です。
・・・・アンジオテンシンII は、血圧上昇(昇圧)作用を持つ生理活性物質です。
・・・・トロンボキサンA2は、血小板凝集作用、血管・気管支収縮作用があります。
・・・・そして高血圧に関わるこれら二つの因子の背景には、生活習慣病(高血圧、高脂血症、動脈硬化や糖尿病)や感染症、自己免疫疾患による糸球体腎炎が背景あることで、腎・糸球体の血管では炎症を生じ、徐々に糸球体の数が減らされていることが明らかにされています。
そして糸球体の数が減れば、当然、循環血液量は変わらないので、結果的に末梢血管抵抗が上がると考えられます。
減らされた糸球体が増えてくることはございませんので、一度損なわれた腎機能を食事等で改善することは出来ても、糸球体の数を回復させることは出来ません。
以上で血圧に関する全体像は把握できたのではないでしょうか?
残りは、より詳細な血圧上昇の機序と治療薬の全体像を把握できれば、血圧に関してほぼ理解でき、かかりつけ医や調剤薬局の先生の説明を理解できることと思います。
また、患者さんとして質問した場合にも、医師や薬剤師の説明を理解できることを期待しています。