切除不能癌の治療法2015 (7)オキソドール注射後に行う放射線治療4
切除不能癌の治療法2015 (7)オキソドール注射後に行う放射線治療4
今回、ようやく具体的な治療結果についてご紹介させて頂けます。
以下で紹介させて頂く症例は、下記タイトルの報告の中から、写真を見てわかりやすいものを選んでご紹介させて頂きます。
タイトル:Phase I study of a new radiosensitizer containing hydrogen peroxide and sodium hyaluronate for topical tumor injection:
a new enzyme-targeting radiosensitization treatment, Kochi Oxydol-Radiation Therapy for Unresectable Carcinomas, Type II (KORTUC II).
ijo_34_3_609_PDF
訳:「過酸化水素とヒアルロン酸ナトリウムを腫瘍局所に注射する新しい放射線増感法:第一相臨床研究、新しい酵素標的放射線増感治療、切除不能細胞癌に対する高知医大オキシドール-照射療法、Type II(KORTUC II )]。
公表雑誌:Int J Oncol. 2009 Mar;34(3):609-18.
研究者:Ogawa Y1, Kubota K, Ue H, Kataoka Y, Tadokoro M, 他。
研究機関:Department of Diagnostic Radiology and Radiation Oncology, Medical School, Kochi University (高知大学医学部 放射線腫瘍学、診断放射線学研究室)
治療例 ・・・症例2について(症例の番号は、前回示した表1の 「Case 2」の患者さんについて治療結果をご紹介します。
代表的な症例は、上のタイトルで示した報告の 図2-11 に示されています。
下の図2は、再発性の切除不能な悪性線維性組織球腫(症例2)の患者さんに高知医大オキシドール照射療法IIの治療効果の証拠の一例として示しています。
悪性線維性組織球腫( malignant fibrous histiocytoma、MFH)については、こちらを参照して下さい。
上の写真は乳腺の表在エコー(超音波検査)で、治療経過を追っています。
左上、右上、左下、右下の順に治療結果を示しています。
そして左上に「24Gy」と示されていますが、このGy(グレイ)とは、放線腺治療に使われる単位で、吸収線量といわれ、放射線が人体に吸収されたエネルギーを表す単位です。
ですので、最初に24Gy(グレイ)、次に右上に示されている36Gy、左下の48Gy、右下の48Gyと4回のリニアック治療前にヒアルロン酸ナトリウムと過酸化水素が注入された結果を現しています。
腫瘍内部のオレンジ色が示す血流は、パワードプラー法で観察していることが解ります。
このオレンジ色の量が腫瘤内部の血流量を表していますので、徐々に血流量が減少していく経過がわかります。
・・・すなわち、腫瘍内部の血流量が減ると言うことは、栄養要求の高い腫瘍に流れ込む血流が減っていますので、ガンの増殖が低下している事を現していると考えられます。
このようにして、徐々にガン組織が放射性アポトーシスを起こして死んでいると判断されます。
(放射性アポトーシスは、放射線照射後のガン細胞がDNA の変異を防ぐために遺伝子の自爆スイッチがONになって 起こる細胞死(自発死)です。)
他にも治療前後の写真が掲載されていますが、わかりやすい画像のみご紹介させて頂きます。
下の写真は、症例1の乳ガン患者さんの例です。
患者さんは、様々な抗ガン剤治療で効果が見られず、今回の治験に参加された方です。
左下が治療前(報告では図3)、右下が治療後(報告では図5)の写真ですが、この写真の中でわかりやすいのが黄色の丸で囲まれたPET検査のデータです。
左の治療前の写真では、黄色に囲まれた部分には、赤色が首と脇の下のリンパ節辺りに見られますが、
治療後の右の写真には見られませんので、リンパ節に転移した癌が治ったと考えられます。
(頭部は、左右どちらも赤色の集積が見られますが、これは脳に糖の集積がある事を示していますので、この赤色は正常です。)
他にもいくつもの治療例が示されていますが、省略させて頂きます。
私見
放射線治療では、放射線が照射された癌組織内で活性酸素(フリーラジカル)を発生させ癌を壊します。
ところが、癌組織は抗酸化酵素を持つため、活性酸素を中和してしまうため治療効果が著しく効果が低下します。
そこで、癌組織内で酸素濃度を増やす他に、ペルオキシダーゼ/カタラーゼのような抗酸化性酵素を不活性化させて、放射線治療の効果を高めることを目的として、過酸化水素を使う方法及び原理は非常にわかりやすいと思います。
加えて、費用もかからず比較的簡単に癌組織の抗酸化能力を叩き、酸素を発生させるという視点は、治療効果の有効性からも大いに期待したいと思います。
今一度、「(2)放射線治療の問題点」の(C) 放射線治療が効果を発揮できない理由 を見て頂きたいと思います。
「目には目を、歯には歯を」のように、「ガンの抗酸化力には酸化剤」でガンを攻略しようとしているかのような手法だと思われます。