床ずれ (12)古田法遵守による褥瘡治療評価5
床ずれ (12)古田法遵守による褥瘡治療評価5
「(8)古田法遵守による褥瘡治療評価1」では、調査研究の方法についての説明だけで終わりましたので、今回は、早速その結果の一部をご紹介させて頂きます。
「(9)古田法遵守による褥瘡治療評価2」では、被険者に対してDESIGN-Rで褥瘡の深さによる4つのグループに分け、各グループについてさらに「古田法遵守・非遵守」による分類を行ったところまでご説明しました。
「(10)古田法遵守による褥瘡治療評価3」では、DESIGN-Rによる褥瘡評価の「深さ」による被険者の分類と古田法遵守・非遵守の分類結果について「絶対標準化差(%)」を指標として古田法遵守群と非遵守群の背景のバラツキを評価しました。
「(11)古田法遵守による褥瘡治療評価4」では、「絶対標準化差(%)」を10%以内と成るように古田法遵守群と非遵守群の被験者の背景を揃えることで古田法遵守の有効性を明らかにしようとする過程で、「傾向スコア・マッチング法」を利用し、両群の特性の差を小さく出来ました。
これでようやく、古田法についての評価が出来るようになりました。
そこで今回は、古田法遵守群と非遵守群の治療効果の違いについて検討した結果をご説明させて頂きます。
タイトル:Active topical therapy by “Furuta method” for effective pressure ulcer treatment: a retrospective study
訳:「効果的な褥瘡治療のための「古田法」による局所療法:後ろ向き研究」
研究者:Katsunori Furuta, Fumihiro Mizokami, Hitoshi Sasaki, and Masato Yasuhara
研究機関:Department of Clinical Research and Development, National Center for Geriatrics and Gerontology, 7-430 Morioka-cho, Obu, Aichi 474-8511 Japan Department of Pharmacy, National Center for Geriatrics and Gerontology, Obu, Japan
公表雑誌:J Pharm Health Care Sci. 2015; 1: 21. Published online 2015 Jul 16. doi: 10.1186/s40780-015-0021-8
結果5 DESIGN-Rの深さの褥瘡分類による「古田法遵守群と非遵守群」の治療期間の差の検定(Mann-Whitney U検定)
<下の図2の見方>
縦軸は褥瘡の治療期間を日数で表しています。
横軸は、褥瘡の重症度を上のDESIGN-Rの深さ(Depth)で分類し、左からd2、D3、D4とD5、DUの4つのグループに分けています。
そして各グループ(d2、D3、D4とD5、DU)は、古田法遵守群と非遵守群に分けています。
こうして、褥瘡の重症度別に、褥瘡治療における治療期間を古田法遵守群と非遵守群で比較しました。
4つのグループの古田法遵守群と非遵守群の棒グラフの上のP値(危険率)は、治療期間の差の検定を行ったものです。
<図2から解ること>
1)グラフ全体から次の事が解ります。
・・・褥瘡の深さで分類したどの褥瘡の重症度(d2、D3、D4とD5、DU)でも、各群左側の古田法遵守群は、非遵守群に比べて治療期間が短いことが解ります。
2)P値(危険率)から解ること。
・・・古田法による褥瘡治療における治療期間は、左端2つの棒グラフが示すd2の平均の治療期間の差(23.6-32.2=-8.6日)は、P値<0.001 なので、8.6日以上の差が出る確率は、0.1%です。
・・・同様に、D3の平均の治療期間の差(46.8-137.3=-90.5日)は、90.5日の差が出る確率が 0.1% である事を意味します。
・・・D4とD5の平均の治療期間の差(122.5-258.2=-135.7日)は、135.7日の差が出る確率が 0.1% である事を意味します。
・・・DUの平均の治療期間の差(78.1-142.5=-64.4日)は、64.4日の差がでる確率が 0.1% である事を意味します。
上の古田法遵守群の有効性に関する0.1%の解釈について、表現方法を換えますと次の通りです。
・・・・褥瘡の重症度がd2群の治療を1000人の患者さんに行うと、1人は8.6日の治療期間の短縮が期待されます。
・・・・また、D3の褥瘡治療を1000人の患者さんに行うと、1人は90.5日の治療期間の短縮が期待されます。
・・・・また、D4とD5の褥瘡治療を1000人の患者さんに行うと、1人は135.7日の治療期間の短縮が期待されます。
・・・・そして、DUの褥瘡治療を1000人の患者さんに行うと、1人は64.4日の治療期間の短縮が期待されます。
私見
1000人の患者さんの治療効果は、「P値が小さいことから、(明らかな治療期間の短縮が期待される人数は「1人」に過ぎないので)2群間の差が大きいわけではない」と言えるかも知れませんね。
しかし、中には劇的に治療期間が短縮する患者さんが見られますので、今後さらに褥瘡の評価と治療理論の発展により、さらなる効果を期待できる可能性を示しているとも考えられます。