床ずれ (13)古田法遵守による褥瘡治療評価6
床ずれ (13)古田法遵守による褥瘡治療評価6
「(8)古田法遵守による褥瘡治療評価1」では、調査研究の方法についての説明だけで終わりましたので、今回は、早速その結果の一部をご紹介させて頂きます。
「(9)古田法遵守による褥瘡治療評価2」では、被険者に対してDESIGN-Rで褥瘡の深さによる4つのグループに分け、各グループについてさらに「古田法遵守・非遵守」による分類を行ったところまでご説明しました。
「(10)古田法遵守による褥瘡治療評価3」では、DESIGN-Rによる褥瘡評価の「深さ」による被険者の分類と古田法遵守・非遵守の分類結果について「絶対標準化差(%)」を指標として古田法遵守群と非遵守群の背景のバラツキを評価しました。
「(11)古田法遵守による褥瘡治療評価4」では、「絶対標準化差(%)」を10%以内と成るように古田法遵守群と非遵守群の被験者の背景を揃えることで古田法遵守の有効性を明らかにしようとする過程で、「傾向スコア・マッチング法」を利用し、両群の特性の差を小さく出来ました。
「(12)古田法遵守による褥瘡治療評価5」では、褥瘡の深さで分類したどの褥瘡の重症度でも、古田法遵守群は、非遵守群に比べて治療期間が短い事が示されました。
今回は、進行した褥瘡を有する患者さんの生存率の変化を古田法遵守群と非遵守群で比較した結果をご紹介させて頂きます。
タイトル:Active topical therapy by “Furuta method” for effective pressure ulcer treatment: a retrospective study
訳:「効果的な褥瘡治療のための「古田法」による局所療法:後ろ向き研究」
研究者:Katsunori Furuta, Fumihiro Mizokami, Hitoshi Sasaki, and Masato Yasuhara
研究機関:Department of Clinical Research and Development, National Center for Geriatrics and Gerontology, 7-430 Morioka-cho, Obu, Aichi 474-8511 Japan Department of Pharmacy, National Center for Geriatrics and Gerontology, Obu, Japan
公表雑誌:J Pharm Health Care Sci. 2015; 1: 21. Published online 2015 Jul 16. doi: 10.1186/s40780-015-0021-8
結果6 褥瘡の進行した患者さんの割合の比較
褥瘡の進行度合いの評価は、DESIGN-Rによる評価で可能になりますので、リンク先の点数の合計が増えれば、褥瘡が進行したと判定されます。
<なお、論文内では「進行した褥瘡」の明確な定義を読み取れませんでしたが、全体を通して「進行した褥瘡=壊死し、デブリードマン処置を行った褥瘡」であると、個人的に解釈していますが、間違いであれば、ご教示頂きたいと考えます。>
<図3の見方>
下の図3の縦軸は「進行した褥瘡の患者さんの生存率の割合」を「1(100%)」として現しています。
横軸は、治療日数です。
グラフ内の緑の線は、古田法遵守群における進行した褥瘡を有する患者さんの生存率の割合の変化を表し、
青色の線は、非遵守群における生存率の割合の変化を表しています。
さて、下のグラフはDESIGN-Rスコアによる褥瘡進行のKaplan-Meierプロットを示したグラフです。
下のカプラン-マイヤーのグラフは、創部のデブリードマン処置(壊死組織の摘出)を行った後の患者の生存率の変化を(古田法遵守群と非遵守群で)比較しています。
<図3から解ること>
カプラン・マイヤー法(Kaplan-Meier method)が使われている理由は、進行する重篤な褥瘡のある患者さんの生存曲線を現していると考えられます。
ただ単に、進行する褥瘡患者さんが日を追う毎に減っていると言うのは、治っているというのではなく、亡くなられているという意味ととるべきです。
つまりカプランマイヤー法では、古田法遵守群と非遵守群の重症な褥瘡患者さんの生存率を比較できますので、上のグラフから次のことが解ります。
1)重症な褥瘡の患者さんについて古田法遵守群と非遵守群を比較すると、遵守群の生存率が高いことが明らかです。
2)重症患者さんの治療100日目における生存率は、赤色の四角で示すとおり古田法遵守群では80%、非遵守群では紫の線で示したように約55%程でした。
3)黒の破線で示した50%生存率に達するまでの生存期間中央値は、非遵守群で約110日後でしたが、古田法遵守群は300日を過ぎても生存率は70%を維持できています。
4)これらの結果から、古田法遵守群の方が非遵守群に比べて重症の褥瘡患者さんの余命を飛躍的に延ばす治療法であると判断されます。
<関連情報>
滲出液の量に対応した基剤の分類と主な薬剤 リンク先3ページ