自律神経 (9)交感神経が支配する副腎について
自律神経 (9)交感神経が支配する副腎について
交感神経の神経伝達物質であるノルアドレナリンは、αとβ受容体のアドレナリン受容体に結合します。
他方、副腎髄質から放出されるホルモンには、「ノルアドレナリン」と「アドレナリン」というホルモンが分泌されます。
・・・ややこしいですね。ノルアドレナリンは交感神経終末の神経伝達物質でしたが、副腎という臓器から分泌されるので同じノルアドレナリンでも、この場合はホルモンとされます。
このように、神経伝達物質の受容体の名前とホルモンの名前が同じであることから、神経伝達物質とホルモンとが混乱したり、わかりにくかったりします。
そこで今回は、自律神経とは離れますが、ホルモンとしてのアドレナリンを中心に、副腎について触れておきます。
副腎(Adrenal grand) ・・・左記の通り、副腎を英語でアドレナール・グランドと言いますので、これは直訳するとアドレナリン・分泌腺です。
副腎は、英語名から「アドレナリン・分泌腺」と言う意味です。
実際には、副腎皮質から、コレステロールを原料に次のステロイドホルモン(副腎皮質ホルモン)が分泌されます。
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- 鉱質コルチコイド(ミネラルコルチコイド、電解質コルチコイド、アルドステロン)・・・腎臓におけるナトリウムの再吸収を促進する。ナトリウムの再吸収に伴い、水分も再吸収され、結果的に循環血流量が増え、血圧上昇につながります。
- 糖質コルチコイド(グルココルチコイド、コルチゾールがある)・・・タンパク質を脱アミノし、糖に変換して、血糖値を上昇させる(「飢餓状態での糖新生」参照)。
- 男性ホルモン(アンドロゲン、テストステロンを分泌するが、主に精巣で作られる。また女性でも作られます)
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他方、副腎髄質からは、カテコールアミン(下図の構造のカテコールとアミンを含む物質)であるアドレナリン、ノルアドレナリンが分泌されますので、神経伝達物質ではなくホルモンですね。
これらは心拍数、血圧の増加、および血管収縮、細気管支の拡張、代謝を促進させる特有の作用があります。 カテコール。
アミン。
アドレナリン。
ノルアドレナリン。
副腎髄質細胞からのアドレナリン放出
副腎髄質からアドレナリンやノルアドレナリンが分泌されるのは、交感神経が副腎髄質に節前線維としてつながって、アセチルコリンを副腎に神経伝達物質として伝えているからです。
副腎髄質は、副交感神経の受容体であるニコチン受容体(ニコチン性アセチルコリン受容体、NN受容体)でアセチルコリンを受け取り、アドレナリンをホルモンとして放出します。
・・・すなわち、副腎は交感神経の神経伝達物質の仲介役アセチルコリンで、副腎髄質にある副交感神経の受容体(ニコチン性アセチルコリン受容体)にスイッチを切り替えています。
こうして、交感神経の興奮刺激をアセチルコリンで副腎髄質に伝え、副腎髄質はアドレナリンとノルアドレナリンが分泌されることで、心臓と細動脈の収縮を増すことで身体の緊張状態を高めます。
副腎髄質から分泌されるホルモンであるアドレナリンの主要な作用は心収縮力の増大で、ノルアドレナリンの主要な作用は細動脈の収縮にありました。
・・・両ホルモンの作用で血圧が上がることはご理解頂けますでしょうか。
他にもアドレナリンには、次のような生理作用がございます。
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- 運動器官への血液供給増大を引き起こす反応・・・心筋収縮力の上昇。心、肝、骨格筋の血管拡張。皮膚、粘膜の血管収縮。消化管運動低下。
- 呼吸におけるガス交換効率の上昇を引き起こす反応 ・・・気管支平滑筋弛緩。
- 感覚器官の感度を上げる反応 ・・・瞳孔散大。
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私見
副腎は交感神経の中継物質としてアセチルコリンを受け取り、アドレナリンとノルアドレナリンをホルモンとして分泌します。
このノルアドレナリンは、交感神経の終末で分泌される神経伝達物質でしたが、副腎自体は神経ではありませんので、副腎が出すノルアドレナリンはホルモンと言うことになります。
さて、副腎髄質がアセチルコリンでホルモンを出すのであれば、どうして副交感神経が副腎髄質に来てないのでしょうか?
交感神経は昼間の興奮・闘争や逃走時に活性化されますが、副交感神経はリラックス状態で活性化されました。
すなわち、副腎髄質は興奮・闘争及び逃走のような瞬時の身体の反応を自動的にサポートするためと考えると解りやすいかも知れません。
夜間の睡眠時や入浴中あるいはトイレなどで副交感神経が有意なときに、副交感神経のアセチルコリンの刺激でアドレナリンが出ても役には立ちません。
以上の説明は、なかなか理論的に理解することは易しくないですね。
・・・・おかげで交感神経が刺激され、ストレスになったという方のために、次回は副交感神経を刺激してリラックスできそうな方法をご紹介させて頂きます。