新型コロナウイルス対策としての家庭内消毒 (2)消毒に適した次亜塩素酸水のpH
新型コロナウイルス対策としての家庭内消毒 (2)消毒に適した次亜塩素酸水のpH
前回の(1)次亜塩素酸水とはでは、次亜塩素酸がpHによって、解離状態が異なることをご説明いたしました。
今回は、どのpH領域の次亜塩素酸水を使うのが新型コロナウイルスの消毒に適しているかについて、ご説明させて頂きます。
厚労省による次亜塩素酸水の分類 ・・・・食品健康影響評価の結果の通知 5ページ目のグラフ参照(下図)。
下のグラフは厚生労働省に報告された食品安全員会の「次亜塩素酸水の遊離有効塩素の存在比」から、次亜塩素酸水を次の3つに分類していることが解ります。
1) 下のグラフの左上に示した「pH2.7以下」・・・pHの低下に伴い塩素ガス(Cl2)が増える「強酸性次亜塩素酸水」。
・・・・強酸性の次亜塩素酸水が、金属等を腐食させ塩素ガスを発生しますので、取り扱いには注意が必要です。
2) pH2.7〜5・・・次亜塩素酸(HClO)が豊富な「弱酸性次亜塩素酸水」。
・・・・pH値の範囲が、pH2.7〜5.0 と広く、強酸性次亜塩素酸水ほど、金属等への腐食性はありませんが、人体に影響があることは否定できません。
3) pH5〜6.5・・・pHの上昇に伴い次亜塩素酸イオン(ClO-)が増える「微酸性次亜塩素酸水」。
・・・・細菌やウイルスの不活性化に効果を発揮する状態の次亜塩素酸水で、pH値が中性に近いことから、人体にとっても影響が少ないと考えられる状態の次亜塩素酸水です。
前回の「(1)次亜塩素酸水とは」の次亜塩素酸の作用機序から、消毒目的に使う次亜塩素酸水は、次の消毒作用を期待したいと考えられます。
1) 細菌やウイルス内に入ってから作用する「解離しない次亜塩素酸(HOCl)」が、細菌やウイルス内で分解し、ウイルス内部の構造を損傷し、また遺伝情報を破壊する。
2) 細菌やウイルス表面に作用する「解離した次亜塩素酸イオン(OCl-) 」により、ウイルス表面を損傷し、活性を低下させる。
これら二つの性質を保持できる次亜塩素酸水として、pH5〜6.5が最適であることがご理解いただけると思います。
注意すべき事
経済産業省は2020年6月26日、「次亜塩素酸水」の使い方・販売方法等について を公表しました。
上記のリンク先によると、次の点を指摘しています。
新型コロナウイルスを除去する場合の点に注意点
・塩素に過敏な方は使用を控えるべきこと。
・飲み込んだり、吸い込んだりしないよう注意すること。
・次亜塩素酸水を、まわりに人がいる中で空間噴霧することはお勧めできないこと。
次亜塩素酸水を商品として購入する際の注意点
(1) 液性を、pH 値によって明記していないものが多い。
(2) 次亜塩素酸濃度を、mg/L 又は ppm を単位として明記していないものが多い。通常、希釈して用いるが、希釈方法の記載がない。
(3)液体の販売にあたって、製造日及び使用可能期間、使用可能期間中における次亜塩素酸濃度の低減について明記されていない製品が多い。
(4)「次亜塩素酸水」を生成できるとするう製品は、使用可能期間(適切な液性・濃度の次亜塩素酸水が生成可能な期間)及び生成後の液体の使用可能期間が明記されていないものがある。
(5) 次亜塩素酸以外の成分について、明記していないものが多い。
・・・・これらの指摘により、販売が中止された製品が少なくありません。
使用上の注意
加湿器等による空間噴霧は有効性・安全性が確認できず、国として推奨しないとしています。
次亜塩素酸水が食品添加物であることを根拠として、人体への安全性をアピールしている商品が出回っていますが、
その多くは安全性の根拠が曖昧なままです。
・・・その理由は、食品添加物等の規格基準によれば「次亜塩素酸水は、最終食品の完成前に除去しなければならない」とされているからです。
参考情報:「次亜塩素酸水」の空間噴霧について ・・・空間噴霧してはいけません!