新型コロナウイルス対策としての家庭内消毒 (8)陽イオン系界面活性剤
新型コロナウイルス対策としての家庭内消毒 (8)陽イオン系界面活性剤(逆性石けん)
前回の「(7)純石けん分」では、下の表の赤枠についてご説明させて頂きました。
そして純石けん分に該当する商品名には、バスマジックリン、うるおい台所石けん、しっとり台所石けん、ヨシミ石けん㈱の無添加食器洗い石けん、無添加台所用石けん、白い布巾洗い、他がある事をお示ししました。
・・・・新型コロナウイルスに対する代替消毒方法の有効性評価 のリンク先16~18ページの「新型コロナウイルスによる検証試験」より引用。
そして、前回の純石けん分、いわゆる石けんは、陰イオン界面活性剤です。
さて今回は、上の表で青枠で囲んだ「陽イオン系界面活性剤」について、ご説明させて頂きます。
この陽イオン界面活性剤は、陰イオン界面活性剤とは逆の電荷を持つことから、「逆性石けん」と言われます。
界面活性剤の種類 ・・・引用先にリンクしてます。
界面活性剤は親水基部分の電気的な性質から次の4種類に分類されています。
それぞれ水に溶けた時に、電離してイオン(電荷をもつ原子または原子団)となるイオン性界面活性剤が3タイプあり、イオンにならない非イオン(ノニオン)界面活性剤の1つとで合計4つのタイプがあります(下図参照)。
イオン性界面活性剤 ・・・水に溶けた場合のイオンの状態により3つ分類されます。
1)アニオン(陰イオン・マイナスイオン)界面活性剤、
2)カチオン(陽イオン・プラスイオン)界面活性剤
3)両性(陰イオンと陽イオンの両方を併せ持つ)界面活性剤。
非イオン(ノニオン)界面活性剤
<補足説明>
2020年6月の時点では、上の表4-2をご覧頂きますと、陽イオン界面活性剤だけでなく、他のアニオン系、両性、及び非イオン系の界面活性剤のいずれについても、新型コロナウイルスに有効性が確認されています。
そして、カチオン系界面活性剤は、他の系統の界面活性剤の半分程度の濃度で、新型コロナウイルスに対して有効である事が解ります。
陽イオン系界面活性剤の消毒機序
界面活性剤すべてが高い殺菌性能を持つわけではなく、特にカチオン(陽イオン)界面活性剤はいわゆる逆性石鹸と言われ、医療分野でも広く殺菌剤として使用されています。
・・・カチオン界面活性剤で代表的なものは、次の通りです。
・塩化ベンザルコニウム
・塩化ベンゼトニウム
・塩化ジアルキルジメチルアンモニウム
上記の中で、「塩化ベンザルコニウム」は「ベンザルコニウム塩化物」、「塩化ベンゼトニウム」は「ベンゼトニウム塩化物」と言う名称で、日本薬局方に収載されており、殺菌・消毒用に用いられる医薬品成分です。
「塩化ジアルキルジメチルアンモニウム」も殺菌・防腐などの作用があり化粧品,医薬部外品などにも配合されている成分です。
なぜカチオン界面活性剤には殺菌作用があるのでしょうか? その詳細はまだよく分かっていないようですが、いくつか仮説があります。
カチオン界面活性剤の作用機序は、
・マイナスの電荷を持つ細菌表面への吸着速度が速く、迅速な殺菌効果の発現が見られる ・・・カチオンとは陽イオンのことです。
・細菌の細胞膜流動性が増して、膜を不安定化させ、破裂しやすくする。
・細菌の細胞膜タンパク質を変性させて、酵素機能を失活させる ・・・といった効果で殺菌すると考えられています。
これらカチオン界面活性剤は電気的にプラスである特徴で殺菌性能を引き出しています。
注意が必要なのはマイナス電荷を有するアニオン系界面活性剤(石鹸、洗剤、シャンプー、中性洗剤など洗浄剤のほとんど)と混用すると、中和され電気的性質は打ち消され殺菌性能は無くなってしまいます。
加えて殺菌対象微生物についても注意を要します。
一般的な細菌(大腸菌や黄色ブドウ球菌など)についてほとんど問題なく殺菌効果を発揮しますが、結核菌等の抗酸菌、及びウイルスのほとんど、細菌芽胞や真菌(カビ)には殺菌効果を示しません。
使用の際には、主な殺菌対象にする微生物種が何か、そしてどのくらいの消毒レベルまで必要なのかを十分把握した上で使用しなければなりません。
・・・しかしながら、上に示した製品評価技術基盤機構は、新型コロナウイルスに対して有効である事を確認して、「新型コロナウイルスに対する消毒方法の有効性評価について」を公表しました。 ・・・・有効性が確認されています。
洗剤の使い方の実際
新型コロナウイルス対策に、ご家庭にある洗剤を使って身近な物の消毒をしましょうを参考に、洗剤に含まれる界面活性剤の濃度を確認できます。
上の図から、界面活性剤の種類と濃度を確認したら、希釈して使用しましょう。
台所洗剤の希釈については、上のリンク先の2ページに希釈方法が書かれています。