ワクチンの臨床試験で発症予防効果はわかるか? (3)臨床試験で発症予防効果はわかる?
ワクチンの臨床試験で発症予防効果はわかるか? (3)臨床試験で発症予防効果はわかる?
発症予防効果の臨床試験 ・・・ワクチンの有効性は発症予防効果で見るのだが?
ワクチンの 発症予防効果 は、ワクチン接種群とワクチン非接種者群の罹患率(発症率)を比較し、ワクチン接種者群における罹患率(発症率)の低下率で発症予防効果を評価します。
具体的には、「感染症予防ワクチンの臨床試験ガイドライン」についての13ページに「ワクチンの発症予防効果」の計算式が示されています。
ワクチンの臨床的有効性は、原則として 直接的な 発症予防効果によって検討する事になっています。
しかしながら、新規ワクチンの発症予防効果の評価は、製造販売・承認の申請前に実施不可能な状況が存在しているのが、新型インフルエンザウイルに対するワクチンや、新型コロナウイルスに対するワクチンです。
独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA;Pharmaceuticals and Medical Devices Agency)は、COVID-19ワクチン開発に関する世界規制当局ワークショップ、及びCOVID-19ワクチン開発に関する世界規制当局ワークショップ#2で、次の4つを示しています。
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- ヒト初回投与試験を開始するために求められる非臨床試験データ
- ヒト試験開始前におけるSARS-CoV-2ワクチンにより誘発される疾患増悪の理論的リスクを見積もる必要
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- 第Ⅲ相臨床試験に移行するために必要な非臨床及び臨床データ
- 第Ⅲ相臨床試験の試験デザインに関する検討事項
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さて、これら第Ⅲ相臨床試験を経ても、なお実際に開発されたワクチンの発症予防効果が確認されていないと言う事は、理解しておく必要があることをご承知下さい。
発症予防効果の実証は無いのに使えるの?
新しく開発されたワクチンの「発症予防効果」を保証するには、新型コロナウイルスの流行時期に、ワクチン接種群と非接種群の発症率を比較する必要があります。
しかしながら、現実的にはそのような臨床試験データはない状況下で、どうしてワクチン接種量を決めているのでしょうか?
・・・・類似の病原体で過去にどの程度の感染ウイルス量では、どの程度の力価のワクチンが接種されてきたのかというデータに基づいて、接種量を決めているようです(ワクチンの臨床試験ガイドラインのリンク先34ページ参照)。
イギリスで感染試験
この内容を書いている過程で、2020年9月24日、イギリスでワクチン接種者にわざとウイルスに感染させて効果を見る試験が行われるとフィナンシャル・タイムズが報じました。
2021年1月からロンドンで新型コロナウイルス・ワクチンの「ヒューマン・チャレンジ試験」が行われると報じました。
この試験は、被験者がワクチンを接種したおよそ1か月後にわざと新型コロナウイルスに感染させ、ワクチンの発症予防効果を調べるための試験です。
この試験を推進するキャンペーン団体を通じてすでに2,000人の被験者が確保されているということで、研究自体はイギリス屈指の名門校インペリアル・カレッジなどが共同で行うとしています。
「ヒューマン・チャレンジ試験」はワクチンの開発段階で過去にも行われてきているもので、イギリスでは医薬品医療製品規制庁と独立した倫理委員会の承認を経て行われます。