寒いときの運動 (7)トレーニングによるイリシンと内臓脂肪の関係
寒いときの運動 (7)トレーニングによるイリシンと内臓脂肪の関係
前回の「(6)マイオカインとは」では、下の表のようなマイオカインがあることをご紹介させて頂きました。
今回は、上記のマイオカインの中で上から2行めにある「irisin(イリシン)」の作用について、「運動とイリシン濃度及び内臓脂肪の関係」を調べた報告をご紹介させて頂きます。
<用語説明> イリシンとは
irisinは骨格筋から分泌されるマイオカインで,中性脂肪を貯蔵する白色脂肪組織を褐色脂肪組織に変える遺伝子を活性化させ、体内における脂肪燃焼を助ける役割を有する事が明らかにされています。
若年者のトレーニング群は,運動介入前後で血中irisin濃度が変化しなかった.
一方,高齢者のトレーニング群は,運動介入後に血中irisin濃度が増加し(P<0.01),血中irisin濃度の変化量と腹部内臓脂肪面積の減少量に有意な負の相関関係が認められた(r=-0.54,P<0.05)。
しかしながら,腹部皮下脂肪面積の変化量と血中irisin濃度の変化量と間には若年者および高齢者ともに有意な相関関係は認められなかった.
この結果から、高齢者の有酸素性トレーニングは,血中irisin濃度を増加させ,このirisin濃度の増加は有酸素性トレーニングによる腹部内臓脂肪量の減少に関与している可能性が示唆されています。
・・・・若い人では、運動の有無によるマイオカイン濃度は変化なし。
・・・・・血中のイリシン(マイオカイン)濃度が上がれば、内臓脂肪面積が下がる可能性が示されたことを意味します。
<私見>
詳細なデータは確認していませんが、高齢者のトレーニングによる血中イリシン(マイオカイン)濃度の増加と内臓脂肪面積の相関係数は、「ー0.54」程度であることから、極めて弱い関連性でしかないことは明らかです。
しかしながら、「Irisin による白色脂肪細胞の褐色脂肪細胞化」から、イリシンが白色脂肪組織に作用することで、褐色脂肪組織に変化させる事が示されています。
従いまして、結果的に褐色脂肪組織内の中性脂肪から生じた脂肪酸は、大部分が細胞内で酸化分解され、ただちに熱に変換されることから、熱産生によってエネルギーを消費・散逸する燃える脂肪組織とされることで、「寒さ刺激」でのみ熱を賛成できる「脱共役タンパク質(Uncoupling protein、UCP」が活性化されると考えられます。

・・・寒冷及び食事誘導性に熱を産生し、褐色脂肪組織が体温維持とエネルギー蓄積及び消費の調節に関わっていることが示唆されています。
このことから、イリシンは、上の図の通りであれば、白色脂肪組織を褐色脂肪組織に変換させる役割をもつことで、間接的に基礎代謝を上げやすい身体に変えていく可能性が考えられます。