新型コロナで汚染された個人用保護具に対するオゾン処理の効果 (1)ウイルス汚染された防護服の除菌効果
新型コロナで汚染された個人用保護具に対するオゾン処理の効果 (1)ウイルス汚染された防護服の除菌効果
2020年に感染拡大した新型コロナウイルスの感染予防のために、世界中でマスクや消毒薬、トイレットペーパーまで不足すると言う事態に陥りました。
そして使用後のマスクや防護服の徹底した「廃棄管理」にまで神経をすり減らす思いで、多くの医療機関が関わってきました。
その後、半年余りの間に様々な角度から研究が進みました。
まだ、治療や予防に関しては万全とは言えませんが、不足したマスクや個人防護服のウイルス除去にオゾンの有効性が示されています。
以下の報告では、オゾンで暴露したマスクや個人防護服に付着したウイルスの遺伝情報をPCR反応で調べることで、オゾンによる除菌効果を調べた報告を見つけましたのでご紹介させて頂きます。
タイトル:Effects of Ozone Treatment on Personal Protective Equipment Contaminated with SARS-CoV-2 (nih.gov)
訳:「新型コロナウイルスで汚染された個人用保護具に対するオゾン処理の効果」
研究者:Bernardino Clavo,1,2,3,4,5,* Elizabeth Córdoba-Lanús,6,7,8 Francisco Rodríguez-Esparragón,他。
研究機関:1Research Unit, Hospital Universitario Dr. Negrín, 35019 Las Palmas de Gran Canaria, Spain;ネグリン大学病院研究ユニット、ラス・パルマス・デ・グラン・カナリア島、スペイン
Chronic Pain Unit, Hospital Universitario Dr. Negrín, 35019 Las Palmas de Gran Canaria, Spain ネグリン大学医学部附属病院 慢性疼痛病棟
公表雑誌:Antioxidants (Basel). 2020 Dec; 9(12): 1222.
今回は、実験方法の全体像についてご理解頂けるようにご説明させて頂きたいと思います。
背景
世界保健機関(WHO)は、2020年3月11日に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックを宣言し、マスクや個人用保護具(PPE)が世界中で不足しました。
そればかりか、使用済みマスクや個人防護服の感染予防対策にまで神経をすり減らす思いで世界中の医療従事者は対応しました。
これらの背景の中、オゾンは強力な酸化剤であり、微生物に対しても有効な除菌剤と考えられてきました。
さらに、オゾンが様々なウイルスを死滅させることが報告されていましたが、これらのウイルスはすべて一本鎖RNAを特徴とするSARS-CoV-2と同じグループに属するウイルスでした。
そこでこの研究では、個人防護服表面にSARS-CoV-2で汚染後、オゾンで曝露して、ウイルスの遺伝情報損傷の程度をPCRで検討しました。
材料
SARS-CoV-2(新型コロナウイルス)で汚染された個人防護服およびフェイスマスクをオゾン処理し、その効果を曝露時間およびオゾン濃度の変化を含めて評価した。
また、相対湿度がSARS-CoV-2に対するオゾンの影響を修飾できるかどうかを調べることであった。
我々は、個人防護服(PPE)に付着したSARS-CoV-2は、適切なオゾン濃度、曝露時間、相対湿度下ではオゾンによって破壊されるという仮説を立てた。
研究方法の概要
あらかじめ65℃で30分間加熱することで不活化されたSARS-CoV-2株(新型コロナウイルス)で汚染させた個人防護服やマスクを以下の2つの方法でオゾンに暴露させた。
第1段階では、高オゾン濃度(500~40000ppm)での30秒から10分間の短い暴露時間の範囲で評価した。
第2段階では、低オゾン濃度(4~12ppm)の効果と相対湿度の関係を調べた。
オゾンで暴露させた後、個人防護服やマスクからウイルスを回収し、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)により、ウイルスの遺伝情報損傷に及ぼすオゾンの効果を評価した。
すなわち、オゾンが「個人防護服に付着した新型コロナウイルスを破壊」していれば、防護服から回収したウイルスをRT-PCRで検討しても、ウイルスは検出されないなずです。
他方、新型コロナウイルスがオゾンの影響を受けなければ、防護服から回収したウイルスをRT-PCRで増幅すれば、ウイルスの遺伝情報は、オゾンで破壊されずに残っていると考えられます。
具体的な方法は、次回以降ご説明させて頂きます。