新型コロナで汚染された個人用保護具に対するオゾン処理の効果 (2)汚染させた防護服をオゾン暴露する
新型コロナで汚染された個人用保護具に対するオゾン処理の効果 (2)汚染させた防護服をオゾン暴露する
前回の「(1)ウイルス汚染された防護服の除菌効果」では、新型コロナウイルスで汚染させた個人防護服をオゾン処理することで、オゾンの除菌効果を調べる実験方法の全体像についてご紹介致しました。
今回は、早速具体的な実験についてご説明させて頂きます。
タイトル:Effects of Ozone Treatment on Personal Protective Equipment Contaminated with SARS-CoV-2 (nih.gov)
訳:「新型コロナウイルスで汚染された個人用保護具に対するオゾン処理の効果」
研究者:Bernardino Clavo,1,2,3,4,5,* Elizabeth Córdoba-Lanús,6,7,8 Francisco Rodríguez-Esparragón,他。
研究機関:1Research Unit, Hospital Universitario Dr. Negrín, 35019 Las Palmas de Gran Canaria, Spain;ネグリン大学病院研究ユニット、ラス・パルマス・デ・グラン・カナリア島、スペイン
Chronic Pain Unit, Hospital Universitario Dr. Negrín, 35019 Las Palmas de Gran Canaria, Spain ネグリン大学医学部附属病院 慢性疼痛病棟
公表雑誌:Antioxidants (Basel). 2020 Dec; 9(12): 1222.
方法1 オゾン曝露の詳細
個人防護服のオゾン曝露は、ネグリン大学病院で行いました。
第1段階では、医療用オゾン発生装置(Ozonobaric P®, Sedecal, Madrid, スペイン)を用いて、500~40,000 ppm (1-80 g/m3)の間のO3/O2ガス混合物を使いました。
オゾンによる暴露環境は、室温(22.0〜23.7℃)および相対湿度(53〜65%)とし、新型コロナウイルスを60ミリリットルのシリンジで個人防護服やマスクを汚染させた。
その後、オゾンガスを排出しました。
第2段階では、200×100×100cm3のオゾン容器と工業用オゾン発生装置、および加湿器を使用しました。
このオゾン容器内で、次の2通りの低濃度オゾンを30分~50分間、曝露させた。
1) 標準相対湿度(62〜63%)条件下では8〜12ppm(0.016〜0.024g/m3)、
2) 99%相対湿度条件下では4〜6.5ppm(0.008〜0.013g/m3)。
オゾン発生器でオゾンを暴露後、オゾンの酸素への自然分解(半減期は20℃で40分、30℃で25分)を保った。
方法2 リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)
あらかじめ新型コロナウイルスで汚染させた個人防護服を、オゾンで暴露した後、個人防護服からRNAを抽出し、新型コロナウイルス検出キットを用いてRT-PCRを行い、ウイルスRNAの定量を行った。
このキットには、SARS-CoV-2遺伝子(Gene ORF1ab、N Protein、S Protein)を標的とする3つの遺伝子分析、およびRNA抽出のコントロールとしてのMS2ファージコントロールが含まれています。また、COVID-19 の陽性コントロールも含まれています。
<用語説明>
PCRとは
PCRとは、Polymerase Chain Reaction(ポリメラ-ゼ連鎖反応)の略で、遺伝情報であるDNAの複製を繰り返すことで目的とするDNAを増やす反応です。
PCRに対して、RT-PCR(reverse transcription PCR、逆転写PCR)は、RNAに対してPCRを実施する手法で、逆転写PCRやRNA-PCRなどとも呼ばれています。
RT-PCRでは、始めにRNAから逆転写酵素によってcDNA(相補的DNA)を合成します。この後はcDNAに対して通常のPCR法を行ないます。
このように逆転写酵素の過程以外は検査方法の原理はPCRと同一です。
相補的DNA(cDNA)は、mRNA から逆転写酵素を使って逆転写反応を利用して合成された二本鎖 DNAです。
この時、一本鎖DNAを2本鎖に結合させる冷やす過程をアニーリングと言いますが、この後、DNAポリメラーゼでDNAを長くつなげていきます。
リアルタイムPCR(Real-time PCR)は、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応 (PCR) による増幅を経時的(リアルタイム)に測定することで、増幅率に基づいて鋳型となるRNAの定量を行なう方法です。 ・・・・上の報告ではこの方法を利用しています。
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の検査方法 ・・・PCRについては、ファイルバイオシステムの説明を参照して下さい。
1)新型コロナウイルスの感染が疑われるヒトの検体(鼻咽頭ぬぐい液や唾液等)から遺伝子を抽出し、
2)RNAウイルスである新型コロナウイルスのRNAの特徴的な部位を、蛍光物質をラベルしたDNAに変換(逆転写)、
3)PCR法で、DNAを増幅させ、増幅していれば、蛍光物質も増えるため蛍光強度が増すことで、新型コロナウイルスに感染していたかどうかが解ります。
当研究所では、主にこの技術を用いた検査装置であるリアルタイムPCR装置による新型 コロナウイルスの遺伝子検査を行います。