新型コロナで汚染された個人用保護具に対するオゾン処理の効果 (5)オゾン暴露時の湿度の影響
新型コロナで汚染された個人用保護具に対するオゾン処理の効果 (5)オゾン暴露時の湿度の影響
「(1)ウイルス汚染された防護服の除菌効果」では新型コロナウイルスで汚染させた個人防護服をオゾン処理することで、オゾンの除菌効果を調べる実験方法の全体像についてご紹介致しました。
「(2)汚染させた防護服をオゾン暴露する」では、具体的なオゾン暴露条件とRT-PCRについてご説明しました。
「(3)高濃度オゾンの効果」では、500~4000ppmのオゾン暴露により、汚染させた個人防護服に付着した新型コロナウイルスの遺伝情報の損傷状態についてご説明させて頂きました。
「(4)オゾン2000ppm及び4万ppm暴露の効果」について検討した結果、ウイルスの遺伝情報を破壊するために必要なオゾン暴露条件は、CT値=2000 程度と考えられます。
今回は、オゾン暴露時の湿度の影響についてご説明させて頂きます。
タイトル:Effects of Ozone Treatment on Personal Protective Equipment Contaminated with SARS-CoV-2 (nih.gov)
訳:「新型コロナウイルスで汚染された個人用保護具に対するオゾン処理の効果」
研究者:Bernardino Clavo,1,2,3,4,5,* Elizabeth Córdoba-Lanús,6,7,8 Francisco Rodríguez-Esparragón,他。
研究機関:1Research Unit, Hospital Universitario Dr. Negrín, 35019 Las Palmas de Gran Canaria, Spain;ネグリン大学病院研究ユニット、ラス・パルマス・デ・グラン・カナリア島、スペイン
Chronic Pain Unit, Hospital Universitario Dr. Negrín, 35019 Las Palmas de Gran Canaria, Spain ネグリン大学医学部附属病院 慢性疼痛病棟
公表雑誌:Antioxidants (Basel). 2020 Dec; 9(12): 1222.
結果4 63%および99%の相対湿度下で低濃度オゾン暴露された個人防護服の新型コロナウイルスのPCR反応に及ぼす影響
<図4の見方>
下の図4で、左の二つのグラフは、相対湿度63%で8~12ppmのオゾン濃度で30分(左側のグラフ)及び50分(中央のグラフ)暴露させた後、ウイルスの遺伝情報をPCRで調べた結果です。
右端のグラフは、湿度99%で30分間4~6.5ppmのオゾン濃度で暴露後、ウイルスの遺伝情報をPCRで調べた結果を示しています。
縦軸と横軸の説明、及びターゲット遺伝子M、O、S及びMS2(コントロール)の説明は、これ以前にもご説明していますので省略します。
<図4から解ること>
1)湿度63%で個人防護服をオゾン処理した結果、湿度とオゾン濃度が同じ条件(左と中央のグラフ)では、30分(左)よりも50分(中)の方がウイルスの遺伝情報が増幅されていない、すなわち破壊されていたことが解ります。
・・・同じオゾン濃度と湿度では、オゾン暴露時間が長い方がウイルスの遺伝情報は破壊されていることが解ります。
2)次に同じオゾン暴露時間で、湿度63%の左端のグラフと湿度99%の右端のグラフを比べてみますと、
ウイルスの破壊には、湿度を上げた方がより効果的であることが示されています。
・・・・湿度99%の時のCT値(オゾン濃度×暴露時間)は、6ppm×50分=300となります。他方、湿度63%のCT値は、10ppm×120分=1200程度必要であると考えられます。
3)オゾン暴露時間が同じ30分間の左側のオゾン濃度(8-12ppm)での暴露は、右端の低いオゾン濃度(4-6.5ppm)にもかかわらず、相対湿度99%の条件下でのオゾン暴露後の遺伝子増幅は認められていません。
すなわち、相対湿度が高いほど、ウイルス汚染された個人防護服に対するオゾンによる殺菌効果が高いことが示されたと考えられます。
・・・・同じオゾン暴露時間では、暴露環境の湿度が高いほどウイルスの遺伝情報は破壊される。
表1の説明は省略します。
まとめ
上のデータから、ウイルスを破壊するためのオゾン暴露条件は、
湿度99%の時のCT値(オゾン濃度×暴露時間)は、6ppm×50分=300となります。
他方、湿度63%のCT値は、10ppm×120分=1200程度必要であると考えられます。