ファイザー社製のコロナmRNA ワクチンの単回投与後の抗体反応　（３）スパイク蛋白Ｓ２に対する中和抗体の特異性

（１）感染歴のあるヒトに対するワクチン接種効果　では、この調査の概要について触れました。
（２）スパイク蛋白Ｓ１に対する中和抗体の特異性　では、コロナウイルスの特徴的なスパイク蛋白S1に対するファイザー社ワクチンで誘導された被験者血清中の IgG抗体の反応性について、「コロナ感染歴のある被験者」、「不顕性感染の被験者」及び「感染歴のない被験者」でそれぞれワクチン１回接種で誘導されたIgG抗体活性強度を調べた結果、感染歴のない被験者に比べ、感染歴のある被験者と不顕性感染していた被験者で誘導される抗体活性が高いことが明らかにされました。

今回は、スパイク蛋白S2に対するファイザー社ワクチンで誘導された被験者血清中の IgG抗体の反応性に関する部分をご紹介させていただきます。

タイトル：Antibody Responses after a Single Dose of SARS-CoV-2 mRNA Vaccine
訳：「SARS-CoV-2 mRNA ワクチンの単回投与後の抗体反応」
研究者：Todd Bradley, Ph.D、.Elin Grundberg, Ph.D.、Rangaraj Selvarangan, Ph.D.、Cas LeMaster, M.Sc.
公表雑訴：March 23, 2021　DOI: 10.1056/NEJMc2102051　・・・・→https://www.nejm.org/doi/10.1056/NEJMc2102051

結果２　スパイク蛋白のS2に対するワクチン誘導性中和抗体の特異性

<スパイク蛋白S２に対するIgG抗体>　

下のグラフの左半分（ベースライン、接種前）について説明します。
茶色が示す感染歴のない被験者のスパイク蛋白S２に対するIgG抗体は、ほとんどが破線よりもやや高いS２に対するIgG抗体の反応性は、前回示したS1に対する反応性よりも高い事が示されています。
他方、感染歴のある青色の丸印が現す被験者のS２に対するIgG抗体は、前回示したS1に対するIgG抗体量よりも、多いことが確認されました。
そして、緑色が示す「不顕性感染被験者の抗体レベル」は、感染歴のない被験者のレベルと感染歴のある被験者のレベルの間くらいの抗体の反応性見られています。

上のグラフの右半分が示す、ワクチン接種３週間後について説明します。
茶色が示す感染歴のない被験者のS２に対するIgGは、S1に対する抗体量と同程度まで IgG抗体が上がっています。
青色が示す感染歴のある被験者のS2に対するIgGは、茶色の感染歴のない被験者のIgGレベルよりもやや高い抗体価が認められています。
そして緑色が示す不顕性感染被験者のた被験者の抗体レベルは、青色の感染歴のあるた被験者のS2に対するIgG抗体レベルと同程度まで増加が見られています。

・・・前回示したS1に対するIgG抗体レベルと比較して、S2に対するIgG抗体レベルは、茶色が示す感染歴のない接種前被験者のS2に対するIgG抗体量は、S1よりもやや高い事が示されました。

また、青色が示す感染歴のある被験者と緑色が示す不顕性感染被験者でワクチン接種３週後に誘導されたIgG抗体のレベルは、感染歴のない被験者で誘導されたIgG抗体レベルよりも高い事が示されています。