フウセンカズラの薬効
フウセンカズラの薬効
2010年、クリニックの庭にインド医学の臨床家から頂いた種を蒔いたら、フウセンカズラが実った。
以前より当クリニックではゴーヤを夏の日よけと食料自給?のために育てており、その薬効はまた、別の機会に紹介させて頂くとして、今回はフウセンカズラの薬効についての報告を紹介させていただきます。
インターネットでフウセンカズラの薬効を調べても、まずヒットしてこない。
そこで医学文献データベースを利用して見つけた論文は次のような内容でした。
研究はインド、カマタカのペス薬科大学のクマールらが発表した論文で、タイトルと雑誌は、「Isolation of anxiolytic principle from ethanolic root extract of Cardiospermum halicacabum.」Phytomedicine. 2011 Jan 15; 18(2-3): 219-23. Epub 2010 Aug 22.
タイトルは「フウセンカズラのエタノール粗抽出液から抗不安物質の分離」です。
この論文の要約は次の通りです。
フウセンカズラの根は、伝統的に「てんかん」と「不安神経症」の治療に使われてきた。
そこで今回の研究は、高架式十字迷路試験と明暗選択テストを用いて、フウセンカズラの根のエタノール粗抽出液が、抗不安作用を有するかどうかをマウスで検討した。
さらに推定される植物成分の特徴を明らかにした。
実験
陰性対照マウスは実験群と等量の溶媒のみを与え、陽性対照群のマウスにはジアゼパムを与えた。
この実験群(陽性対照群)マウスには、フウゼンカズラの根のエタノール抽出物を与えた。
高架式十字迷路試験(下図)で、エタノール粗抽出物を与えた実験群マウスは、壁の無い道を進む数を増やし、また明るい箱に入っていた時間も増やした。
結論
これらの結果は、フウセンカズラの根には効果的な不安緩解物質が存在する事を示している。
観察されたこの抗不安効果の植物成分は、有名な合成物として知られており、フウセンカズラの青酸グリコシドであることが確認された。
フウセンカズラ フウセンカズラの種 (白いハートのマークがあります)
用語の説明
緩解(かんかい)とは 病気の症状が軽減またはほぼ消失し、臨床的にコントロールされた状態。治癒とは異なる。
ジアゼパム 代表的な抗不安薬。ここではフウセンカズラのエタノール抽出物による効果の比較として用いた。
高架式十字迷路試験(下図)
この装置はマウスが壁際を好むという性質を利用して、壁の無い道(open-arm)を恐れずに探索するか観察します。
マウスに抗不安薬を投与すると壁の無い道open-armを探索することが多くなります。
逆に不安惹起薬を投与したり、ストレスを負荷したりすると怖がって壁のある道(closed-arm)ばかり行き来します。
壁の無い道に侵入した回数と壁の無い道の上での滞在時間の変化から抗不安薬や不安惹起薬の効果を評価する実験装置です。
明暗選択テスト
暗い箱と明るい箱をマウスが行き来できるように連結させた装置を用意します。
まず暗い箱にマウスを入れると、マウスは暗い方を好むが、通常は探索行動をするので明るい箱の方にも行きます。
しかし不安の強いマウスは暗い箱にいることが多く、明るい箱に行く回数や明るい箱での滞在時間が少ない。
・・・・・これによってマウスの不安の状態を比較測定することができます。
まとめ
フウセンカズラの根に含まれる抗不安成分は、ジアゼパムでした。
この薬効には、上のリンク先の通り、抗不安、抗興奮作用、不眠症の治療にも使用されています。
その作用機序は、ジアゼパムは大脳辺縁系、ならびに視床と視床下部に作用して鎮静作用や抗不安作用をもたらすとされています。
実際、不眠や日常生活に支障が出るほどの不安や緊張が強い場合に処方、パニック障害でされています。
また、引きこもりや自律神経症状、強い緊張や心身症でも利用されています。
・・・・さて、これで不安が解消されたり、引きこもりが改善されるほどの効果は期待できませんが、インド医学で経験的に不安の軽減に利用されていたとすると、その伝統医学は注目すべきなのでしょう。