ペットを介する病気 (7)キャンピロバクター症
ペットを介する病気 (7)キャンピロバクター症
(1) キャンピロバクターとは
キャンピロバクターは、人や動物に下痢を起こす細菌の一種で、ヒトでは動物からの感染よりも食中毒の原因菌としてノロウイルスに次いで多い原因菌ですが、保菌動物との接触によってヒトにも感染します。
(2) 感染経路
人への感染経路には、次の二つがあります。
(a) 汚染された食品を食べることによって発生する食中毒
食中毒の原因食品としては、肉類であることが多く、特に生の鶏肉・牛生レバーはキャンピロバクターの汚染が高いことが報告されています。しかし、普通に加熱調理すればキャンピロバクターは死滅するので、加熱が不十分にならないように注意することや生肉を食べないことで感染を防ぐことが出来ます。
(b) 感染している動物と接触することによって発生する人獣共通感染症
人獣共通感染症の原因としては、下痢をしている動物・家畜から感染します。従って、下痢をしているペットと接触した後は、手洗いを十分に行いましょう。
(3) 臨床症状(ヒト)
下痢、腹痛、発熱、、悪心、嘔吐、頭痛、悪寒、倦怠感が主な症状です。小児の場合は血便をすることも多いです。
(4) 動物での症状
キャンピロバクターは、牛、豚、鶏などの畜産動物だけでなく、犬、猫などペットとして飼育される動物にも保菌されています。保菌している動物の多くは無症状ですが、子犬、子猫では下痢を起こすことが報告されています。
(5) キャンピロバクターの感染力
キャンピロバクターの感染力は他の食中毒を起こす細菌に比べて強いものの、伝染病のように人から人に感染することはありません。その理由はキャンピロバクターが酸素濃度の高い空気中では死滅しやすいためです。キャンピロバクター症で下痢をしている人や動物と接触しても、手洗いで感染を防ぐことが可能です。
(6) 診断と治療
診断
糞便等からキャンピロバクター菌を分離することが最も確実な方法です。しかし、その培養には微好気培養装置が必要で、時間がかかるためにPCR法等の遺伝子診断技術が導入されつつあります。
治療
重篤な症状や敗血症などを呈した患者では、対症療法と共に抗生物質が使用されます。動物での治療は対症療法が中心となりますので、獣医師の診察を受けてください。
(7) 予防
ヒトでは、生肉料理(トリ刺し、レバ刺し等)は避けましょう。
その他、イヌやネコ等のペットからの感染例も報告されており、接触する機会の多い幼小児及び高齢者は、ペットの健康状態が悪い時には接触を避ける事が必要です。
ペットでは、ネコが鳥を狩る習性もありますので、捕まえてきた場合は下痢の兆候がないかを観察して下さい。