目の病気 (13) 抗VEGF療法
目の病気 (13) 抗VEGF(Vascular Endothelial Growth Factor、血管内皮増殖因子)療法
前回、(12) 加齢黄斑変性の治療 でご紹介した血管内皮増殖因子(VEGF)は、ここ数年の間に飛躍的な発展を遂げていますので、もう少し説明を加えます。
(A) 抗VEGF療法
加齢黄斑変性の網膜では、血管の新生を促進している血管内皮増殖因子(VEGF)の働きを抑える薬物を使って、加齢黄斑変性に伴う脈絡膜新生血管の形成を抑制する治療法が行われています。
(B) 加齢黄斑変性のタイプ・・・・・滲出型と萎縮型に分けられます。
萎縮型
黄斑部に網膜色素上皮-脈絡毛細血管板の萎縮病巣が形成され、視細胞の喪失は高度となるが、進行は緩慢で視力低下の程度も滲出型と比べ軽度です。
滲出型
黄斑部の網膜色素上皮細胞から脈絡膜の変化により発生する脈絡膜新生血管が増殖する疾患です。 以下に紹介する新薬はこの浸出型の加齢黄斑変性に対して有効性が認められています。
(C) 浸出型の加齢黄斑変性に対する新薬の登場
網膜黄斑部の中心にある中心窩は中心視野に影響を与えています。
浸出型の加齢黄斑変性に対する二つの治療薬が、2008年から2009年に厚生労働省で認可され、2012年末にも新たな薬が出ました。
これら抗VEGF療法と呼ばれる治療薬を消毒後の目の硝子体内に定期的に注射を行う治療法です。血管内皮増殖因子(VEGF)の働きを抑えることにより脈絡膜新生血管の活動性を低下させ、脈絡膜新生血管を退縮させることができます。
血管内皮増殖因子(VEGF)にはいくつもの種類があり、眼内に存在する主要なVEGFは、VEGF121とVEGF165です(121や165という数字は、VEGFを構成するアミノ酸の数です)。
いくつかの種類のVEGFの中で、特定のVEGFに対して特異的に作用する事から、その薬剤を分子標的薬と言っています。
(C) 加齢黄斑変性で期待されている分子標的薬
ペガプタニブナトリウム(商品名:マクジェン)
この薬剤はVEGF165のみと結合し、VEGF165の働きを選択的に阻害する薬です。
ラニビズマブ(商品名:ルセンティス)
これは、VEGF121及びVEGF165にも結合し、その働きを抑える効果を持っています。
アフリベルセプト(商品名:アイリーア)
上記2つの治療薬よりもより多くのVEGFの作用をブロックするため、より高い血管内皮増殖阻止効果が期待されています。
ベバシズマブ(商品名:アバスチン)
大腸癌及び乳ガンに対する治療薬としては承認されていますが、新生血管の発育阻害により、症状の進行を止められるものと期待されているものの、現時点では加齢黄斑変性に対して保険適応はございません。
これらの新薬による治療効果は、いずれも継続的に治療を受け続ける必要がございます。