着床前診断
着床前診断
新型出生前診断
昨2012年夏から導入が騒がれていた「新型出生前診断」は、妊婦の末梢血中にわずかに含まれる胎児の遺伝子を解析することにより、出産前に胎児遺伝子を調べる非侵襲的検査として、多くの注目を集めています。
2013年4月から開始されたこの新型の出生前診断を受けた人は、開始1カ月で441人となったと報じられています。これだけの受診者がいた事は、高齢妊娠の増加に伴い胎児の健康状態について不安な妊婦が相当数いる実態を示している事は明らかだと考えられます。
無精子症
一方で、2013年5月11日、不妊治療で有名な福岡県のセントマザー産婦人科医院では、無精子症の男性の精子になる前の細胞を使って体外受精を行い、これまでに80人の子どもが生まれた事を公表しました。
これは精液中に精子がほとんどない無精子症の男性から、精子になる前の細胞を精液中あるいは精巣組織中から探し出して、卵子と体外で顕微授精させるという技術です。
セントマザー産婦人科医院がこれだけの成績を示した事は、新しい技術が使われていると推測されますが、生まれてきた子供に対する健康評価は、まだこれからではないでしょうか。安全性の評価と有効性の面だけを見て、危険性や成長過程におけるリスクについてはまだわかっていない事の方が多いかも知れません。
着床前診断
加えて、このセントマザー産婦人科医院のサイトを閲覧すると、着床前診断まですでに行われている事が示されています。
着床前診断とは、体外受精で出来た受精卵を子宮に戻す前に、受精卵の染色体や遺伝子に異常がないかどうかを調べる診断技術です。
この着床前診断は不妊症や習慣流産などで出産に至までの原因が、受精卵の遺伝的な要因によるものと考えて、受精卵の状態の時にその割球を取り出して遺伝子異常を調べる技術です。
着床前診断を受けることで、流産の遺伝的な原因を持つ受精卵を排除できるという面では体外受精の妊娠率を上昇させることが可能と考えられています。しかしその一方で、受精卵に操作が加わる事で、受精卵にダメージを与え、流産の原因となりかねない面もあります。
まだまだ理論上考えられる利益と不利益の間で、普及しにくいと思われていた着床前診断まで行っている不妊治療施設がある一方で、医療技術と法律並びに倫理面でのバランスとどう向き合うのかも問われているように思います。
なぜなら、これらの技術に集まる患者さん達が少なくないと言う面では、それなりの需要がありますが、その一方で安全性の評価に関する情報が必ずしも公表されてはいないように感じられるからです。