認知症 (5)有酸素運動は海馬のサイズを増す 2
認知症 (5)有酸素運動は海馬のサイズを増す 2
今回の調査対象は、認知障害のある120名の高齢者です。この120名を運動を行うグループと運動を行わないグループに分けて記憶の変化や海馬容量の変化を2年間にわたって調査しました。
その結果は次のようにまとめられました。
1)有酸素運動を1~2年間継続することで、認知症患者の萎縮した海馬容量を2%改善した。しかし尾状核と視床容量では、変化が見られなかった。
2)海馬容量の増加は脳由来神経栄養因子(歯状回にある神経細胞成長因子)の血清濃度の増加と関係していた。
3)2年間運動を行わなかった対照グループでは、海馬容量がさらに減少していた。
4)しかし、より強い運動を行うことでさらに海馬萎縮の改善を期待したが、返って海馬容量の改善は少なかった。
用語の説明
海馬:脳の記憶や空間学習能力に関わる領域。
歯状回:海馬領域の一部。
尾状核:海馬に接する神経細胞の集まりで、学習と記憶及びフィードバック処理に関わっている領域。
視床:視覚、聴覚、体性感覚などの感覚情報を大脳新皮質へ中継する重要な役割を担う。
脳由来神経栄養因子(BDNF; Brain-derived neurotrophic factor):神経細胞の成長を調節するもので、1990年にはアミノ酸配列も決定されて、現在、医薬品としての試験研究が行われています。
次回は、ピッツバーグ大学のErickson KIらのこれまでの研究成果をまとめます。